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ついに医療現場でも生成AIが実用・実証開始 事例をみながら今後を考える

[2024.04.16]


医療業界にも生成AIの導入が進んできたようで少しずつニュースで見かけるようになってきました。

生成AI ChatGPTの登場は2022年の11月だそうです。衝撃的な登場によりメディアにも多く取り上げられてきましたが、これまでに、ChatGPT以外の生成AIの登場、テキストだけではなく画像や動画、さらにはこれらの複数組みあわせの生成など、恐ろしいスピードで生成AIが生み出されさらに成長をしています。
生成AIが医師国家試験やMBAなどの合格水準に達するようなアウトプットを出せるようになったということもよく聞かれるようになりました。

生成AIはIT企業など一部の業界だけで収まる話ではなく、いよいよ医療業界にもこの波は押し寄せているのです。
とくに、2024年の4月からは医師の働き改革が開始されることは大きなトピックとなっていますが、もとより、医療現場では慢性的な人出不足となっています。
生成AIを利用することで医療現場の業務改善をする取り組みが始まっています。

時代に合ったテクノロジーにキャッチアップしていくことは医療の質を上げていくために、当法人や医療業界にとって重要なことと思います。常に良い医療を提供するにはどうしたらよいかを考えていきたいと思います。

今回のブログでは生成AIが医療現場でどのように使われ始めているかの例を見ていきます。

医療現場で使われ始めた生成AI実例

診療ガイドラインを学習した医師アバターによる問診

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所( https://www.nibiohn.go.jp/ )、日本IBMら
「生成AIを使って医療現場の負担を軽減しつつ、医療の質を落とさず患者の満足度を高める医療を実現したい」

医師の姿をしたアバター(バーチャルな人)が患者さんを問診、症状を聞き取り治療の流れなどについて説明する生成AIを開発するということです。各学会の診療ガイドラインを学習させることで医療的に正しい受け答えを生成できるようにし、大阪国際がんセンター( https://oici.jp/ )で実証試験していくとのことです。
想定する使用方法としては、来院前にWEBでアバターと会話をしながら問診を行い診察時間の短縮を行うこと、システムで集めた情報はデータベース化して新たな治療法の開発などにも活用するということです。そのため、日本IBMのIBM WatsonxというAIやデータプラットフォームでAI基盤を構築し、その基板上で生成AIを使用していくということです。

下記記事参照
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240307/2000082538.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000476.000046783.html

書類作成業務に生成AIを使用

AI問診などを手掛けるUbie株式会社( https://ubie.life/ )
が恵寿総合病院( https://www.keiju.co.jp/ )の書類作成業務への生成AI利用による業務改善効果の検証を行っています。

医師の退院時サマリー作成業務では、業務時間を平均5分時間短縮、看護師の退院時間後要約作成業務、医療事務スタッフによる退院サマリー作成、主治医意見書・診療情報提供書作成補助業務でも作業時間削減の効果が見られたということです。

生成AIに多数の文章の要点をまとめさせることで、スピーディーなサマリー作成につながったという結果です。
たかが5分、されど5分で、恵寿総合病院では年間約6500人の患者さんが退院するため、医師の書類作成業務時間を年間約540時間削減できる可能性を示しています。
このような積み重ねは2年、5年、10年と蓄積してきますし、今後さらに生成AIをうまく使い時間削減が実現されればもっと大きな効果を発揮してくるものを思われます。

ユビー社 下記記事より抜粋
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000048083.html

生成AI搭載電子カルテで医療文書の作成支援

NEC社は主に大規模病院向けの電子カルテのメーカーでありますが、生成AI機能を搭載した電子カルテ「MegaOak/iS(メガオーク アイエス)」を2024年4月にリリースします。
「電子カルテに記載の診療情報をもとに、診療情報提供書(紹介状)と退院時サマリーに活用できる文章案を自動生成します。」と表記があることから、先に記したユビー社の書類作成時間の削減というとことでコンセプトは似ているものと思われますが、電子カルテ上で生成AIに関する操作ができるというのであれば一歩進んでいると言えるでしょう。
さらに次のような表記もあります。
「「MegaOak/iS」以外の電子カルテシステムを導入している医療機関でも利用可能とする予定です。」
つまり、生成AIで医療文章の作成支援をするシステムを単体でリリースすることも検討しているということが伺えます。
クリニックや中小規模の病院でも医療文書特化型の生成AIを気軽に使えるようになる日はそう遠くないのかもしれません。
NEC社WEBサイトより抜粋
https://jpn.nec.com/press/202403/20240318_01.html

NEC開発の生成AI Cotomiの医療現場使用における想定事例

CotomiはNEC社が開発する独自のLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)です。このLLMは高い日本語力を持つため、日本の医療特有の専門用語などに強いという特徴があります。 Cotoimiを用いて医療現場の下記のような業務の支援を行うことを想定しています。
外来受付の自動化
患者が次回診察予約の取得や変更を行う際、受付窓口や電話など人手を介する必要があり、患者、職員とも手間がかかる。
このような課題を、AIチャットボットなどのコミュニケーションツールにより、次回診察予約可能日の提示や予約の取得、変更を可能とします。
次回診察予約の自動化により、受付対応時間外での受付やむ人対応ができ、職員の対応不可を軽減しつつ、患者満足度を向上することが可能となります。
症状詳記の作成支援
診療報酬請求の際には場合によっては症状詳記が必要になります。
厚生労働省の保険局医療課医療指導監査室が出している保険医療機関向けの手引き「保険診療の理解のために」には次のような記載があります。
医学的に妥当適切な傷病名等のみでは、診療内容の説明が不十分と思われる場合は、請求点数の高低に関わらず、「症状詳記」で補う必要がある。
・ 当該診療行為が必要な具体的理由を、簡潔明瞭かつ正確に記述すること。
・ 客観的事実(検査結果等)を中心に記載すること。
・ 診療録の記載やレセプトの内容と矛盾しないこと。
・ 虚偽の内容を記載しないこと。

症状詳記を作成するにあたり、タイムライン×検査結果×診療録の情報が必要となりますが、同じ電子カルテ内に情報があったとしてもその情報を集約し文章を作成するとなるとそれなりの時間がかかるでしょう。
生成AIが電子カルテ内から必要な情報を抽出し症状詳記の下書きを作ることで作成作業の時間を削減します。
NEC社WEBサイトより抜粋
https://jpn.nec.com/government/wp/02.html 他にも先に挙げた退院時サマリーの作成やオンライン診療への利用などがホワイトペーパーに挙げられています。
NEC社WEBサイトより抜粋
https://jpn.nec.com/government/wp/02.html

ききょう会でも活躍するデジタルテクノロジー

生成AIの他、様々なデジタルテクノロジーは業務の改善とともに医療の質も高めてくれます。
医療法人社団ききょう会では東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)を行っていますが、特に在宅ホスピスケア、緩和ケアに力を入れており、患者さんの中にはお体の状態が急変する方も多くいらっしゃいます。
・巣鴨ホームクリニック
豊島区、北区、文京区、板橋区
・東十条クリニック
豊島区、北区、文京区、板橋区
・花畑クリニック
足立区、葛飾区、埼玉県草加市、八潮市
・伊奈クリニック
埼玉県上尾市、桶川市、伊奈町、蓮田市、さいたま市見沼区・北区・岩槻区

在宅医療では医療機関側が患者さんのご自宅に訪問することになりますが、急変などがあったときに患者さんがクリニックに来るということはできないため、できるだけ急変が起こる前に予兆をキャッチすることが重要になります。
そのため、ききょう会では遠隔でリアルタイムなモニタリングが可能な心電計を導入し、患者さんが自宅に居る状態でも患者さんの体の状態をモニタリングできるようにしています。

また、在宅医療とりわけ終末期の在宅ホスピスケアでは1人の患者さんに関わる職種や事業所が増えます。クリニック内では医師、看護師、相談員、医療事務が、そしてクリニック外から訪問看護、訪問介護、ケアマネジャー、薬局など複数の専門職や事業所が1人の患者さんそしてその家族のケアに関わっていきます。
このような状況ではリアルタイムで正確な情報を手に入れるのが難しくなってきます。この問題を解決するため当法人では医療介護情報の専用のコミュニケーションツール「MedicalCareStation」を使用し、リアルタイムで正確な情報を多職種、多事業所で共有できるようにしています。

他にも、当法人の電子カルテはタブレット端末で持ち運ぶことを前提とし、薬局への処方箋送信機能や、クラウドでの情報共有など、事務所外で利用することを想定した機能が備わり医療現場の業務効率を上げられるように取り組んでいます。

生成AIなどデジタルテクノロジーを用いることで、業務改善を行いながら、患者さんへのケアという最も大事な部分の質と量を上げていけるでしょう。 一方で、AIやデジタルテクノロジーではできないこと、例えばガイドラインの画一的な手法ではなく、患者さんや家族にとって最適な個別の解決策やケアを施していくことが今後の医療の重要なミッションになっていくことと思います。
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