令和7年度厚生労働省概算要求から見る在宅医療の未来
概算要求とは?
概算要求とは、各省庁が次の年度の予算編成に向けて財務省に要求する予算概要です。
この概算要求は令和7年度の日本の動きを見据えることができ、医療機関の運営にも関わる重要な情報も入っています。
今回は特に当法人に影響の大きい在宅医療分野に関連する内容について、ポイントを押さえてみました。
医療・介護のデジタル化推進
患者さんの利便性向上とスタッフの業務効率化を目的として近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)のために日本は大きく力を入れています。
予算は前年度の201億円から大きく増え358億円を予定しています。
さらにこの中で注目の点を抜粋します。
電子処方箋の更なる普及拡大
電子処方箋は令和5年(2023年)1月26日より開始されていますが、引き続き国を挙げて普及拡大が進められており、令和7年度も重要な政策と位置付けられています。
「電子処方箋の有効活用のための環境整備事業」(予算1.2億円)、「電子処方箋の利活用促進事業」(予算83百万円)という新たな予算が組み込まれる予定です。
医療機関側も電子処方箋への対応を進めることで、患者さんの利便性向上、医療機関間の情報共有の促進、事務業務の効率化などが期待できます。
厚生労働省 令和7年度予算概要要求資料より引用
医療情報システムの基盤強化
オンライン資格確認等システムによる全国医療情報プラットフォームの構築は医療DXの中心としてここ数年大きな力を入れてきています。この動きは令和7年度以降も継続されることになるでしょう。オンライン資格確認等システムの安定運用などを通じ、医療機関における患者情報の一元管理や、医療機関間の連携強化を図ります。
医療DXの推進に関する工程表や在宅医療DXの推進、在宅医療のオンライン資格確認についての記事はこちら
2024年4月開始「マイナ在宅受付WEB」で在宅医療はどう変わる?
次のような事業が新設されるようです。
「電子カルテ情報等分析関連サービス構築事業」(予算6.2億円)
医療DXの推進に関する工程表における、電子カルテ情報共有サービスで共有される医療情報の二次利用を可能とするための事業です。
「保健医療情報拡充システム開発事業」(予算5.5億)
救急時に意識不明等で患者の意思確認ができない状態でもマイナンバーカード等を用いて医療情報の閲覧を可能とし、適切な医療を提供できるようにする取組みです。
「自治体検診DX推進モデル事業」(10億円)
全国医療情報プラットフォームの構築において、自治体検診情報についても、これと連携する仕組みを構築することにより、医療機関・薬局等と自治体の間で必要な情報を共有可能にし、自治体システム標準化の取組の状況を踏まえながら、連携を開始します。
「医療機関におけるサイバーセキュリティ確保事業」(3.5億円)
医療情報基盤の安定稼働のためのセキュリティ確保は重要な問題です。近年はランサムウェア対策に注目が集まっており、データのオフラインバックアップを行うことや、外部ネットワークとの接続の安全性の検証・検査を支援します。
厚生労働省 令和7年度予算概要要求資料より引用
ケアプランデータ連携システムの機能拡充
ケアプラン連携システム自体は令和5年(2023年)4月20日から稼働をしています。
補助金などもありますが、まだまだ普及していないのが現状です。
ケアプラン連携システムは居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間(在宅医療機関については「居宅療養管理指導」の算定施設)でケアプランデータを連携し円滑な介護サービスをサポートするシステムです。
令和7年度は、ケアプラン連携システムのサーバーOSの更新やユーザーニーズに対応する機能追加などが予定されています。
「ケアプランデータ連携システム構築事業」の予算は前年度の1.7億円から2.6億円に増加する予定です。
厚生労働省 令和7年度予算概要要求資料より引用
地域包括ケアシステムの深化
在宅医療機関は、地域包括ケアシステムにおいて患者さん(介護施設含む)と病院の間に位置し医療提供の入り口となる重要な役割を担っています。
かかりつけ医機能の推進
在宅医療においても、かかりつけ医として患者さんや介護施設と連携することが重要です。
これは6月の診療報酬改定(定期的な訪問診療が重視された)でも明らかとなっています。
次のような事業が新設されています。
かかりつけ医機能(定期的な訪問診療)を重視する2024年度診療報酬改定についてはこちら
https://kikyoukai.net/blog/kaitei2024-zaitaku/
「かかりつけ医機能研修事業」(20百万円)
地域で新たに開業し地域医療を担うことを検討している病院勤務医や、既に地域の中小病院や診療所でかかりつけ医機能を担っている医師等が研鑽を積む研修体制の整備等を支援するものです。
かかりつけ医機能を担う医師の養成に必要な研修体制の整備等にかかる経費の補助を行います。
厚生労働省 令和7年度予算概要要求資料より引用
地域支援事業の推進
地域包括ケアシステムの実現に向けて、高齢者の社会参加・介護予防に向けた取組、配食・見守り等の生活支援体制の整備、在宅生活を支える医療と介護の連携及び認知症の方への支援の仕組み等を一体的に推進しながら、高齢者を地域で支えていく体制を構築します。
前年度に引き続き1804億円の予算です。
厚生労働省 令和7年度予算概要要求資料より引用
介護人材不足に対応する事業
医療現場における人材不足はよく言われることではありますが、介護施設に関してはそれを上回るとされています。
当法人の訪問先の介護施設でも例外なく人材不足について話を聞きますが、介護人材不足のために以下のような事業が行われる予定です。
今後は介護現場のDXや外国人人材の増加が見込まれるため、連携する在宅医療機関として知っていても損ではないでしょう。
また、介護DXにより、より品質の高い医療が提供できるになることも期待できます。
介護DXに関する記事はこちら
介護現場におけるテクノロジー導入促進
介護ロボットやICTなどのテクノロジー導入を支援し、介護職員の業務負担軽減と介護サービスの質向上を図ります。
特に、令和7年度は、開発・実証・普及のプラットフォーム運営、介護ロボット等の導入効果に係る大規模実証、介護ロボットに関するフォーラム等による情報発信など、重点的に取り組みが実施されるようです。
厚生労働省 令和7年度予算概要要求資料より引用
外国人介護人材の受入と定着支援
介護分野における特定技能外国人の受入れを拡大し、日本語学習支援や相談支援などを充実させます。
外国人介護人材の活躍は、介護人材不足の解消に大きく貢献することが期待されています。
医療法人社団ききょう会の医療DX
今回の概算要求においても、日本はDXに多くの予算を投じていることが伺えます。
DXはよりよいサービスの提供やスタッフの業務負担軽減のためには不可欠な手段となっていることが分かります。
医療法人ききょう会は東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)の提供を行っていて、特に在宅ホスピスケア、緩和ケアに力を入れており、患者さんの中にはお体の状態が急変する方も多くいらっしゃいます。
豊島区、北区、文京区、板橋区
豊島区、北区、文京区、板橋区
足立区、葛飾区、埼玉県草加市、八潮市
埼玉県上尾市、桶川市、伊奈町、蓮田市、さいたま市見沼区・北区・岩槻区
在宅医療では医療機関側が患者さんのご自宅に訪問することになりますが、急変などがあったときに患者さんがクリニックに来るということはできないため、できるだけ急変が起こる前に予兆をキャッチすることが重要になります。
そのため、ききょう会では遠隔でリアルタイムなモニタリングが可能な心電計等を導入したり、医療介護情報の専用のコミュニケーションツール「Medical Care Station」でリアルタイムで正確な情報を多職種、多事業所で共有できるようにするなど、医療のDXに積極的に取り組んでいます。