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ICTによる病診連携/緩和ケア連携の推進

[2024.10.28]

病診連携

当法人は在宅医療を中心に手掛ける医療機関ですが、急性増悪など在宅での医療的対応が困難となった場合は集中的な加療のために病院と連携し入院の調整を行います。

この過程では、患者さんの状態を詳細に把握し、適切な病院を選択しスムーズに接続することが重要です。


また、入院加療により症状が改善した患者さんは病院から在宅への復帰を行うために退院の調整が行われます。この際、在宅での継続的なケアプランの作成や、必要な医療機器・介護サービスの手配など、きめ細かな準備が必要となります。


入院時、退院時には「どの病院が相応しいか」「病院は受け入れが可能か」「体の状態はどのようになっているか」「薬はどうするか」など様々な情報の整理や共有が行われ、それに応じてコミュニケーションも発生します。

これらの情報には、患者さんの既往歴、現在の症状、使用中の薬剤、介護状況、家族の希望など、多岐にわたる内容が含まれます。

情報の整理や共有、コミュニケーションは病診連携にとっては非常に重要なものとなります。

そのため、これらが適切に行われることで、患者さんに最適な医療を提供し、スムーズな入退院を実現することができます。


このように、病診連携とは病院(入院のための病床を20以上持つ医療施設)と診療所との高度な検査や治療のための連携のために不可欠なのです。

病診連携により、患者さんは地域の診療所・クリニックで日常的な診療を受けながら、必要に応じて高度な医療を病院で受けることができるようになります。


病診連携では主に病院の地域医療連携室という部署が窓口となり、やりとりを行います。

地域医療連携室は、医療ソーシャルワーカーや看護師などの専門スタッフで構成され、患者さんの円滑な入退院をサポートする重要な役割を担っています。

 

従来の病診連携

現在の病診連携は、診療情報提供書(紹介状)を郵送やFAXで送付する紙ベースの情報共有と、患者さんの状態や入退院の調整などを電話で行うコミュニケーションがベースとなっています。診療情報提供書には、患者さんの基本情報、主訴、現病歴、既往歴、検査結果、治療経過などが記載されます。

これらの方法は一定の効果を上げてきましたが、リアルタイムでの情報更新が困難であったり、転記ミス、電話対応による業務の中断、紙の保管や管理の煩雑さという課題がありました。

例えば、急な状態変化があった場合、その情報を迅速に共有することが難しく、適切な対応が遅れる可能性がありました。

一方で、生産年齢人口の減少や医療費の削減が叫ばれる世の中において、これらの課題を人的資源の増強で解決するというのは不可能なのが現実です。医療従事者の労働環境改善も急務となっており、効率的な業務遂行が求められています。

 

ICTによる病診連携

2024年度診療報酬改定ではICTによる地域連携に加算が付くようになりました。これは日本の医療DXを後押しする一部分でもあります。

具体的には、「在宅医療情報連携加算」や「在宅医療DX情報活用加算」などが新設され、ICTを活用した情報共有や連携が評価されるようになりました。

医療と介護 ICTによる地域連携

令和7年度厚生労働省概算要求から見る在宅医療の未来

 

当法人では以前よりMedicalCareStation(以下MCS)などの地域連携のためのコミュニケーションシステムを利用することで主に介護医療施設、訪問看護ステーション、ケアマネジャー、患者さん家族との連携をスムーズに行い、一定の成果を出してきました。

MCSでは、患者さんごとのグループを作成し、関係者間で情報共有やメッセージのやり取りを行うことができます。


ただ、MCSは病院(とくに地域の中核となる大きな病院)では情報の管理上向いていないところもあるようで、病診連携においては従来のアナログな情報共有を行ってきました。大規模な病院では、多数の患者情報を管理する必要があり、より高度なセキュリティや管理機能が求められるためでしょう。


しかし、アナログな情報共有の流れも近年変わりつつあり、病院の地域連携室と在宅医療機関がやりとりを行うためのICTシステムが普及しつつあります。

例えば東京都の一部の中核病院で導入が開始され、この度当法人でも導入したCAREBOOKという入退院支援システムです。

CARE BOOK WEBサイトより引用

入退院支援システムで病診連携がDX化

 

入退院支援システムの機能

入退院支援システムには次のような機能があります。(CAREBOOKの例)

 ・オンラインでの入退院調整業務

 ・チャットコミュニケーション機能

 ・複数病院への一括打診機能

 ・患者情報の管理

 ・全国の医療介護施設を検索できる「サーチ」機能

これらの機能により、リアルタイムでの患者情報の更新と共有、診療情報提供書や画像データの安全な送受信ができるようになり、病診連携における「相応しい病院を探す→電話する→情報を送信する→更新がある場合さらに電話する→情報を送信する」作業をスムーズに行い、これらに付随して発生する待ち時間を短くすることができるようになりました。


例えば、チャットコミュニケーション機能を使用することで、電話でのやり取りが減少し、業務の中断が少なくなります。

また、複数病院への一括打診機能により、適切な受け入れ先を迅速に見つけることができます。

さらには、入院先病院との円滑な情報交換、退院後のケア計画の迅速な共有もでき、転院調整時の業務負担も軽減されるようになりました。

退院後のケア計画には、在宅での医療・介護サービスの内容、服薬管理、リハビリテーションの計画などが含まれ、これらを病院と在宅医療機関で共有することで、切れ目のないケアを提供することができます。

 

事例

脳梗塞後のリハビリ中のBさん(68歳)が肺炎を併発し、急性期病院への入院が必要になりました。入退院支援システムを使用して複数の病院に一括で入院相談を行い、わずか2時間で受け入れ先が決定。従来の電話での調整では1日以上かかっていた業務が大幅に短縮されました。この事例では、Bさんの詳細な医療情報(現在の症状、既往歴、使用中の薬剤など)をシステム上で迅速に共有することができ、受け入れ先の病院も適切な準備を整えることができました。

 

緊急時の対応力向上

緊急時には1分1秒を争うものですが、緊急入院先を探すときにも「病院を探す」という時間がかかっていました。

システムにより緊急入院先の迅速な確保ができ、同時に正確な情報伝達を行えるようになることで、患者さんや家族、さらにはスタッフにとっても、より安心感のある在宅医療機関となることができます。

緊急時の対応では、患者さんの最新の状態、使用中の薬剤、アレルギー情報、既往歴などの重要な情報を瞬時に共有することが可能となり、適切な救急対応につながります。

 

事例

在宅人工呼吸器使用中のALS患者様Cさん(62歳)の夜間の急変時、CAREBOOKを通じて担当医が即座に患者情報を確認。救急隊と搬送先病院にも正確な情報を伝達でき、スムーズな救急対応につながりました。この事例では、Cさんの人工呼吸器の設定、日常的なバイタルサイン、使用中の薬剤情報などが迅速に共有され、搬送先の病院で適切な準備を整えることができました。

CARE BOOK WEBサイトより引用

在宅緩和ケア・在宅ホスピスケアでの病診連携

2024年度の診療報酬改定では地域の緩和ケア病棟との情報連携に関する新設項目や加算がありました。具体的には、「緩和ケア病棟緊急入院初期加算」が新設され、ICTを活用して患者の診療情報等を確認できる体制を構築している場合に算定可能となりました。

地域で取り組む緩和ケア


当法人では在宅緩和ケア・在宅ホスピスケアに力を入れています。

そのため、緩和ケア病棟との連携のために緩和ケア地域連携カンファレンスへも積極的に参加し、入退院支援システムによるスムーズな情報連携も行うことで、緩和ケア・ホスピスケアの質も向上するものと考えています。


入退院支援システムにより、症状の変化をまとめリアルタイムで共有し、緩和ケア病棟における薬剤調整の迅速な実施などに繋がります。

例えば、疼痛管理や呼吸困難感の緩和など、症状の変化に応じて迅速に対応することが可能となります。

また、患者さんとご家族の希望や意向も共有しやすくなり、その人らしい最期を迎えるためのケアプランの作成と実施がより円滑に行えるようになります。

厚生労働省資料より引用

地域連携のDX

国は医療DXとして全国医療情報プラットフォームを構築すべく政策を進めています。このプラットフォームは、患者の医療情報を安全に共有し、より質の高い医療サービスを提供することを目的としています。

当プラットフォームの中には電子カルテ情報共有機能や救急時医療情報閲覧機能がありますので、入退院の調整はいくらかスムーズになることは考えられます。

例えば、異なる医療機関で受診した際の検査結果や処方情報を共有することで、重複検査や重複投薬を防ぐことができます。

しかし、リアルタイムなコミュニケーションや情報共有はなかなか難しいのではないかと思われます。全国規模のプラットフォームでは、即時性のあるコミュニケーションや細かな情報のやり取りには限界があるかもしれません。

ましてや当プラットフォームは2030年にかけての工程となっているため、まだしばらくはその恩恵にあずかれないでしょう。そのため、当面は地域ごとの連携システムの構築と活用が重要となります。

厚生労働省資料より引用


在宅医療(訪問診療)は患者さんから離れたところで、遠隔で、多種多様な人(訪問看護、ケアマネジャー、薬局、病院の地域連携室、家族)と様々な情報のやりとりを行う必要がありますので、デジタルテクノロジーの活用が大きな業務負担軽減に繋がります。

例えば、患者さんの状態変化や服薬状況、介護サービスの利用状況など、多岐にわたる情報を関係者間で共有し、タイムリーに対応することが可能となります。


医療法人社団ききょう会では、デジタルテクノロジーを積極的に活用することで、業務負担を軽減し本業である医療の質を向上させています。具体的には、入退院支援システムの導入、医療介護専門職用コミュニケーションツール、クラウド電子カルテシステムの最適化などを通じて、より効率的で質の高い医療サービスの提供を目指しています。


これらの取り組みにより、医療スタッフがより多くの時間を患者さんとの直接的なケアに割くことができ、患者さん一人ひとりのニーズに合わせたきめ細かな医療サービスを提供することが可能となっています。


医療法人ききょう会は東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)の提供を行っており、特に在宅ホスピスケア・緩和ケアに力を入れています。

巣鴨ホームクリニック

豊島区、北区、文京区、板橋区


東十条クリニック

豊島区、北区、文京区、板橋区、足立区


花畑クリニック

足立区、葛飾区、埼玉県草加市、八潮市


伊奈クリニック

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