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医療と介護 ICTによる地域連携

[2024.06.18]

厚生労働省 令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】より引用

医療介護連携の重要性

医療と現代の高齢化社会において、医療と介護の連携はますます重要になっています。

とくにICTを活用することで地域全体での包括的なケアを実現すべく、2024年の診療報酬改定や介護報酬改定においては「在宅医療情報連携加算(医療)」「介護保険施設等連携往診加算」(医療)」「往診時医療情報連携加算(医療)」「在宅医療DX情報活用加算(医療)」「入院時情報連携加算(介護)」「協力医療機関連携加算(介護)」「生産性向上推進体制加算(介護)」などの加算項目が新設、見直しされました。

医療と介護は切り離すことは出来ませんが、医療介護には多くの専門職、専門事業所が関わります。
事業所だけみても病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション、入所介護施設、通所介護施設、訪問介護などがあり、さらにその中に、医師、歯科医師、看護師、介護福祉士、ケアマネージャ、相談員、薬剤師、リハビリなど数多くの専門職が存在します。これらの多くの専門事業所と専門職をスムーズにつなぐことが地域医療介護連携のポイントになってきます。

医療法人社団ききょう会 巣鴨ホームクリニックのある東京都豊島区は日本の自治体の中でも医療と介護のICTによる連携に力を入れてきた自治体の一つです。ききょう会もこれを後押しすべく積極的にICTを取り入れてきました。
豊島区の実例や日本国内で先進的な取り組みを行っている他の自治体を例に挙げ、ICTによる医療と介護の地域連携の現状とその効果を詳しく紹介します。

豊島区の取り組み

豊島区の在宅医療連携への取り組み
豊島区では在宅医療と介護との連携における活動を多く行っています。

顔の見える連携を構築

豊島区では豊島区内の8つに地区で地域包括支援センターが設置され、それぞれの地区で「多職種連携の会」を構築しています。
また、豊島区在宅医療連携推進会議を設置し定期的な会議(としま在宅医療連携担当者連絡会など)を行っています。
当クリニックも多職種連携の会に参加し定期的に意見交換会や勉強会を行っております。

当法人作成資料より引用

ICTの活用

豊島区医師会が中心となり「メディカルケアステーション(MCS)」という医療介護者向けSNSを導入しています。
医療・介護関係者限定のタイムラインと患者・家族参加タイムラインの2つのタイムラインと掲示板機能があります。 医療・介護関係者限定のタイムラインは、患者を取り巻く医療・介護関係者が参加し、医療や介護に関する必要な情報をやり取りするツールです。
豊島区からは保健福祉部高齢者福祉科(主に高齢者の相談業務や難病事業)、池袋保健所健康推進課・長崎健康相談所(主に難病事業)、高齢者総合相談センター・地域包括支援センター(主に高齢者の相談業務)などがMCSに参加しています。
当法人のクリニックでもMCSを積極に活用しています。

一般社団法人全国医療介護連携ネットワーク研究会WEBサイトより引用

医介連

また、豊島区のメンバーが中心となって一般社団法人全国医療介護連携ネットワーク研究会(医介連)を立ち上げています。当法人の巣鴨ホームクリニックもメンバーの一員です。
当研究会のWEBサイトに以下のような記載がありますが、ICTを積極的に活用していく姿勢を示しています。

「当研究会は、ICTを活用し、医療介護のみならず、福祉、行政、教育等までの連携による地域包括ケアシステム構築のための次の事業を行います。」

一般社団法人全国医療介護連携ネットワーク研究会WEBサイトより引用

 

一般社団法人全国医療介護連携ネットワーク研究会WEBサイトより引用

 

他の自治体の例

千葉県柏市

柏市では医療介護の地域包括ケアに関する総合的な取り組みを行ってきており、その取り組みは「柏モデル」として全国的にも有名です。

柏モデル

柏モデルでは医療介護など多職種の連携において「カシワニネット」というICTを活用した情報共有システムを構築しています。このシステムにより医療・介護関係者がICTシステムを通じて患者情報を共有し、切れ目のない医療介護を実現しています。
カシワニネットは東京大学とカナミックネットワーク社が開発したカナミッククラウドをベースとしているようです。

介護多職種連携・在柏モデルガイドブックより引用

 

愛知県名古屋市

名古屋市はICTを活用して地域包括ケアシステムを推進し、医療と介護の連携を強化しています。
名古屋市の取り組みは、特に在宅医療と介護の連携に重点を置いています。
名古屋市の取り組み
在宅医療・介護連携推進事業や在宅医療体制の整備事業に係る相談窓口「名古屋市はち丸在宅支援センター」を設置し、在宅療養に関する相談対応や、多職種連携の推進、在宅医療の体制整備を行っています。
また、ICTによる医療・介護ネットワーク「はち丸ネットワーク」により、在宅医療や介護との連携推進を行っています。
はち丸ネットワークは中部テレコミュニケーション株式会社というKDDIグループの会社が運用を行っているようです。

はち丸ネットワークWEBサイトより引用

北海道札幌市

札幌市では、在宅で療養する高齢者の医療・介護情報を一元的に管理する紙を主体とした「在宅医療・介護連携手帳」を導入しています。これはWEBサイトからチェックボックスで入力することもできますし、紙で出して、書き込むことも可能です。
手帳には、高齢者の病歴、服薬情報、介護サービスの利用状況などを記録し、医療・介護関係者が情報を共有できるようになっています。

また、札幌市北部では医療・介護関係者間の情報共有を目的とし東区医療介護ネットワーク協議会が「北部ICTネットワーク」をルール明記により作り上げています。
東区医療介護ネットワーク協議会のWEBサイトには地域病院の連携のために必要な情報が集約されています。例えば、空床情報やショートステイの空き状況を知らせたり受け取ったりすることができます。

まとめ

日本では医療と介護、自治体、事業者間は縦割りで存在しているためその間の情報連携が課題となります。
特に患者さんの医療情報は医療介護関係者全体で共有することで正確性や即時性が増すためサービス品質に直結するのですが、秘匿性の高い情報でもあるため情報連携を行うのも一筋縄ではいかないというのが現状でしょう。

今後日本の医療DXが進み医療や介護の情報がマイナポータル(マイナンバー)で共有されるようになるといくらか課題も解決されるのでしょう。
厚生労働省が推進する「医療DX令和ビジョン2030」では医療情報基盤と介護情報基盤、行政・自治体基盤が連携する全国医療情報プラットフォームを作り上げます。
このプラットフォームの構築とともに、医療介護の情報連携が加速していくものと考えられます。

厚生労働省資料より抜粋

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