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進む介護DXが医療に与える恩恵

[2024.01.30]
日本は医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるべく、オンライン資格確認(マイナンバーカードに保険証機能を付けるなど)の推進をしています。
患者さんが許可をすればマイナンバーカード(マイナポータル)を通じ過去の処方薬の情報や特定健診の情報を医師が得られることになりますので、より質の高い医療を提供するのに役立つとされています。

この医療のDX化は「医療DX令和ビジョン2030」と厚生労働省内閣府で掲げられており、日本の医療DXの10年計画のような形で進められているものです。
この「医療DX令和ビジョン2030」の資料の中には次のような資料があります。



https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/data_rikatsuyou/dai11/siryou2.pdf
「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームより抜粋

一番目立つ位置の赤点線枠の囲み中には「医療情報基盤」というものがありますが、同じ囲みの中には「介護情報基盤」「行政・自治体情報基盤」があります。つまりこれら3つの基盤が密接に連携することの重要性を示しています。
ユースケースとして「救急・医療・介護現場の切れ目ない情報共有 意識不明時に、検査状況や薬剤情報等が把握され、迅速に的確な治療を受けられる 入退院時等に、医療・介護関係者で状況が共有され、より良いケアを効率的に受けられる」と示してあります。
医療機関と介護施設、訪問看護ステーション等で記録が別々になっており、迅速な情報共有が難しかったり、情報が足りなかったりすることはよく起こることです。ですので情報が連携されれば医療、介護、看護の連携効率が上がりより質の高い医療介護サービスを受けられるようになるでしょう。
しかし、これは記録のみに関することですのでほんの一部のことです。
本記事ではこの介護と医療の繋がりの重要性に着目しつつ、介護のDXが医療のDXに与えていく影響について見ていきます。

介護も医療と同様に科学的な裏付けで行っている

医療では様々な論文やガイドラインなど科学的な裏付けがあります。
「よくわからないけど、この草を食べたら治るでしょ?」という医師はたぶん居ないと思います。医師は科学的根拠をもって処方等を行っております。同様に国は科学的根拠のある医療について医薬品承認や医療機器承認を行い、さらにそこから医療保険適用をするかどうかの判断を行っています。
介護保険が適用される介護サービスでも同様です。保険が用いられる以上は科学的な根拠が必要でしょう。「〇〇という介護サービスを提供することで××という自立支援の成果をもたらすことがデータで分かっているから△△点の介護報酬を設定する」とういうような具合です。
世界で最も高齢化の進む日本では、効率的な介護保険の仕組みを作り上げるべく科学的介護について本格的に取り組んでいるのです。これは世界的に見てもとても先進的なことです。

科学的介護とは介護を受ける人が自立支援や重症化予防のための介護を受けることでどの程度の効果があったかを明らかにすることです。日本ではこの科学的介護について「科学的介護情報システム(LIFE)」で各介護事業者が行った介護行為とその効果についてのデータをとっています。このデータを蓄積していくことで本当に有効な介護サービスはどのようなサービスなのかをアップデートしていっています。それが3年に1度ある介護報酬改定に反映されという仕組みです。


上記「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームより抜粋したものの一部を拡大

介護データは医療でも役立つ!介護DXの例をご紹介

一般的に人は高齢になればなるほど全身の筋力が衰え歩くことが出来なくなってきたり、食事を飲み込みことも困難になってきます。同時に様々な病気を患い医療も必要になってくるものです。
高齢者で自立がむずかしくなってきても自分らしい生活をしていくために介護や医療のサービスがあるのですが、デジタルテクノロジーの進歩によりこのサービスの在り方も変化しています。さらに昨今の介護人材不足もありテクノロジーに頼らないとサービスが成り立たなくなっている現状もあります。
以下介護で用いられているテクノロジーについて記していきます。

健康情報のモニタリング

近年のIoT(モノのインターネット)やセンサーの進化には目覚ましいものがあります。
ウェアラブルデバイスや非接触センサーにより高齢者の体の情報(体温や呼吸、睡眠状態など)をリアルタイムで捉えることで、介護従事者の業務改善に寄与する機器が多く出てきました。
これらの機器は多くの場合は介護施設での定期巡視やおむつ交換、バイタル測定の回数を減らすことを目的に使用されます。
一例を挙げると、ベッドの下に敷くことでベッド上の高齢者の体の状態をモニタリングする機器があります。この機器を用いることで高齢者が現在ベッド上に居るのか、呼吸状態はどうなのか、睡眠状態なのかどうかがモニタリングできます。この機器により夜間スタッフの定期巡視の回数を減らしたり、睡眠中の高齢者を起こさずに安否の確認ができるようになり喜ばれています。
医療機関にとってもこの情報は非常に役立つでしょう。例えば、夜眠れない高齢者に対して医師がどのような診療を行うかですが、睡眠導入剤の処方をするのかしないのか、処方するにも薬剤のタイプを色々と検討することになります。その際に高齢者の1日の睡眠状態が分かれば医師は適切な手を打ちやすいのは言うまでもありません。
下記パラマウントベッド社の「眠りSCAN」は体動を見ることで睡眠状態をモニタリングします。体動に基づき心拍数や呼吸数も計測できます。

https://www.paramount.co.jp/series/2/2000061
パラマウントベッド社 眠りSCAN より抜粋

健康情報からケアプランの質を向上させる

ICT機器により取得されたデータを基にすることで、一人ひとりに合わせた個別のケアプランを作成するのにも役立ちます。これは医師も居宅療養管理指導という形でケアプラン作成にも携わっているからです。
例えば、排尿のタイミングや尿量を測定することで高齢者のトイレ介助やおむつ交換に役立てる機器があります。この機器はセンサーにより高齢者の排尿パターンを分析して、トイレのタイミングを予測したり、おむつ交換を効率的に行ったり、尿失禁を予防するために使用されていますが、医師の判断にも大いに役立つでしょう。
この機器から得られる情報をもとに的確な居宅療養管理指導ができるようになり、ケアマネージャーとともにより自立支援の実現性の高いケアプランの作成ができるようになるものと考えられます。



https://dfree.biz/
トリプルダブリュー社 Dfreeより抜粋

介護職員や家族とのコミュニケーションの質や効率の向上

電子化された介護記録(これは介護ソフトに入力されたものだけではなくスマホで撮影する画像なども含まれます)は、施設内では介護スタッフ間での情報共有を容易にするものですが、画像や記録の情報は医療用のSNSやチャットを通じで外部の医療機関にも簡単に共有が可能です。例えば、褥瘡があり皮膚の状態を医師に伝えるときに、電話ではその状態を伝えるのは困難でしょう。ですが、医療用SNSやチャットで画像を一つ送れば皮膚の状態は電話より容易に正確に伝わります。
また、紙に書かれた情報をいちいち転記してFAXしたり、自ら運ぶよりも、データをデジタルで加工しデジタルデータのままでしたら送信は簡単です。 これにより、コミュニケーションの円滑化や一貫性を保ち医療の質を上げることができます。また、家族とのコミュニケーションツールとしても機能し、高齢者の健康状態や日々の変化を共有することで、信頼関係の向上にも繋がります。


https://about.medical-care.net/html/
エンブレース社 メディカルケアステーション より抜粋

データによる精度の高い判断や予測

在宅医療では高齢者が転倒などをして頭にアザや内出血などのケガをしているのをよく見ます。
医療では最悪の事態を想定するため頭を打っている場合には、救急搬送でCTやMRIなどの検査をしてもらうことが多いのですが、もしかしたら頭を打ったのではなくただのかすり傷の可能性も捨てきれません。
しかし、その傷が出来た瞬間にその場にいなかったのであればどのように発生した怪我なのかは検証は困難です。多くの場合、介護職員や看護職員の定期巡視や起床支援時にはじめてケガの存在に気づくためその怪我がいつ、どこで、どのように発生したのかは想像でしかないのです。
このようなケースではカメラを通した介護見守りICT機器が役に足ります。
カメラによる介護見守りICT機器では、転倒などの異常行動が見られた時には自動でその前後の録画を行います。また、異常行動が見られた時点でアラートを通知することにより介護職員が転倒等の予防に努めることができます。
怪我が出来た原因が分かれば医師のその後の判断の質は高まりますし、同じようなことが起こるようでしたら予測して環境整備をすることで予防に努められるでしょう。家族への説明もスムーズに行うことができます。

https://www.konicaminolta.com/jp-ja/care-support/service/hitomeq-caresupport/
コニカミノルタ社 HitomeQ(ひとめく) より抜粋

まとめ

以上のようにいくつか取り上げましたが、介護DXのツールはそれぞれ統合して使うこともできますし、むしろ統合してこそ効果的な介護サービスを提供することができ、医療の質を次のレベルへと引き上げることが期待されています。
日本国としては医療介護ともに厚生労働省の管轄ではあります。しかし、保険やその他制度などは縦割りで別ものになっているため医療と介護は別物のように感じてしまいますが、切っても切り離せないものとなっているのが現実です。
その中で医療DXは質の高い介護を実現するサポーターとなりますし、介護DXは質の高い医療を実現するサポーターにもなります。
「医療DX令和ビジョン2030」により先導されるDX化された医療介護がどのような形になるのか、今後の動きから目を離せませんし、このような政策やテクノロジーにキャッチアップしていくことで当法人のレベルアップにもつながっていくことと考えています。
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