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2024年4月開始「マイナ在宅受付WEB」で在宅医療はどう変わる?

[2024.03.18]

オンライン資格確認の現状

日本は医療DXの推進のため、マイナポータルを通じた医療情報アクセスへ大きな力を入れています。この医療情報基盤は今後、介護情報基盤と行政・自治体と合わせて全国医療情報プラットフォームを形成していく予定となっています。

そのための入り口となるのがマイナ保険証(オンライン資格確認)ですが、マイナ保険証が開始され2年以上が経ちました。現在、マイナ保険証の医療機関での実使用率は数パーセント程度といわれており、なかなか現場での使用が進まないのが実態のようです。

一方でデジタル庁が行った調査(インターネットモニター20,000人(就労者・日本標準産業分類中分類99業種×原則200人以上)に対し、マイナンバーカード取得状況等に関するアンケートを実施(第8回・令和5年度第1回)。(実施期間:令和5年11月28日(火)~12月25日(月))を見てみると、「健康保険証としての利用(30.5%)」という思ったよりも利用がされているような記載もあります。2024年1月22日のデジタル庁の情報では、マイナンバーカードは全人口の79.1%が申請済み、そのうち健康保険証としての登録率は73.8%ですので、比較的若い世代は少しずつマイナンバーカードの保険証利用をするようになってきていることが伺えます。

なお、日本は2024年12月2日(元々は2024年の秋を目標としていました)には現在の保険証を廃止することを決めています。(猶予期間最長1年間) やらなければならない状況になれば何とか進むのかなと思いますが、トラブルにならなければよいですね。

さて、マイナンバーカードに保険証情報が入ることで、患者さんが同意をすれば薬剤や特定健診、診療情報を医療機関側で参照することができるようになりますが、そのためにマイナンバーカードを読み取るための専用端末が医療機関側には置いてあります。
この端末ですが、実は医療機関内から持ち出すことができないため、訪問診療やオンライン診療を行っている患者さんからはマイナポータルを通じた各種情報の参照が出来ずにいました。
しかし、2024年4月からは、訪問診療やオンライン診療を受けている患者さんでもオンライン資格確認が使用ができるように「マイナ在宅受付Web」というものが使用できるようになる
ようで、現在は少しずつ整備が進められています。

マイナ在宅受付Webとは

マイナンバーカード読み取り機能の付いたモバイル端末から専用のWebサイトにアクセスをします。このWebサイトをマイナ在宅受付Web(下記画像の「Webサービス」というものに当たります)といっています。訪問診療の場合、これらは医療機関側が準備をします。
マイナ在宅受付Webの画面を患者さんに見せながら患者さん本人によるパスワード入力やマインバーカードの読み取りにより患者さんがマイナポータルへのアクセスができるようになるというものです。
このマイナ在宅受付Webはオンライン診療でも使用ができます。その際にはオンライン診療システムを通じて患者さんがマイナ在宅Webにアクセスをし、同様の操作を行うということです。

(厚生労働省資料 中医協 総-1 5. 12. 27 医療DXについて(その5) より抜粋)

現在、ほとんどの医療機関の外来受付には顔認証付きオンライン資格専用端末が設置されています。
今回のマイナ在宅受付Webの仕組みがあれば医療機関側に高価な専用端末を置かずにオンライン資格確認をすることができたのではないかと思ってしまうかもしれませんが、外来ならではの事情(次から次へと患者さんがやってくる、なりすまし防止のための顔認証など)もあるので、外来型と訪問型とはこのように仕組みを変えたのかもしれません。
また、訪問型は毎回の保険証確認は必要ありません。訪問診療の在り方として、定期訪問が前提ですので、患者さんのなりすまし(患者さんが別の人に入れ替わる)が起こることが考えにくいためです。
なお、このマイナ在宅受付Webの環境整備のために医療機関側には費用の補助が出ますが、100%の補助ではないので、医療機関側には一定の持ち出しが発生する可能性があります。


2024年4月から開始する取り組みですので、2024年4月時点で全ての医療機関で可能ということはないですが、現在はマイナ在宅受付Webの環境整備のために急いで準備している医療機関は多くあるものと思われます。

在宅医療を主とするクリニックへのメリットとデメリット

医療法人社団ききょう会では東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)を行っています。

・巣鴨ホームクリニック
豊島区、北区、文京区、板橋区

・東十条クリニック
豊島区、北区、文京区、板橋区

・花畑クリニック
足立区、葛飾区、埼玉県草加市、八潮市

・伊奈クリニック
埼玉県上尾市、桶川市、伊奈町、蓮田市、さいたま市見沼区 ・北区・岩槻区

当法人ではがんなどの終末期における緩和ケアやホスピスケアに力を入れていますが、終末期には多くの医療専門職や家族、自治体との連携が必要になります。
今回のマイナ在宅受付Webについては大いに影響がありそうです。
マイナ在宅受付Webによるオンライン資格確認により、例えば、薬局や訪問看護ステーションやとの情報連携がスムーズとなること、そして別途患者さんが受診した医療機関での処方薬等の情報提供などがスムーズになる期待があります。

また、毎年7-8月にかけては後期高齢者医療保険の保険証の更新となりますが、毎年保険証の情報を更新するために一定の労力が現場に発生しています。 「保険証情報貰ってきてください」という医療事務からの声かけの手間や、患者さんに「保険証を見せてください」という医師や看護師の手間、保険証を探して提示する患者さんの手間、保険証を受け取ってそれをカルテに取り込む手間、介護施設では保険証のコピーを作成してくださっているところもあるようです。これら少しずつではありますが、後期高齢者医療保険証の多くの患者さんで7-8月に毎年のように同じ手間が発生しているのが現状です。これらの手間が改善されるのではないかと考えられます

さらに、情報管理の面でも有効であると考えています。マイナンバーカードに関しては情報管理の面でネガティブなニュースがありますが、現場レベルでは情報セキュリティ面の向上に役立つことが考えられます。
とくに患者さんの保険証の情報を「スマホで撮影する」「コピーに取る」など行っている場合ですと、スマホの紛失やコピーの紛失による個人情報流出というリスクを抱えることになります。これらのリスクを無くすことができるのは一つのメリットでしょう。

他にも保険証更新による負担割合の変更など請求業務や各種情報変更における転記業務などの負担減が期待できます。

ただ、これらをメリットを享受するためには一時的に負担が発生するのでしょう。
マイナ在宅受付Webのマニュアルを見ていると、端末の準備やシステム改修の他にも、患者さん側での説明と作業が避けられません。特に在宅医療を受けている患者さんの平均年齢は高く、スマホの小さな画面を見るのは難しいかもしれませんし、このようなシステムには抵抗がある方が多いといわれます。ですので丁寧に説明をし、操作をサポートする必要が出てくるかと思います。診察の合間に済ませられない可能性もあるため事務員などがが個別でサポートをする方が現実的かもしれません。

(厚生労働省資料 中医協 総-1 5. 12. 27 医療DXについて(その5) より抜粋)

医療DXを少しずつ進め、そして少しずつ恩恵を得る

マイナ在宅受付Webの取り組みでは、患者さんが自宅に居ながらも、オンラインで資格確認ができるようになります。これにより、在宅医療やオンライン診療を受ける患者さんの利便性が向上するとともに、医療情報の取得を医療機関側ができるようになることで、より患者さんに適切な医療を提供できるようになるでしょう。

また、病院、診療所、訪問看護ステーション、薬局、介護事業所など、関係する機関の情報連携が密になり、切れ目のない医療・介護の提供が進むようになると考えられます。

このように記すだけでしたら簡単なことではありますが、現実には様々な障壁があります。その障壁を少しずつ取っ払いながら、便利な未来に少しずつ進んでいき、気が付いたらその便利さが当たり前の世界になってるのでしょう。
未来の当たり前の世界にはまた新たな医療の形ができていくのだろうと考えます。時代に合わせた最善の医療を提供していくことが医療機関の責務でしょう。
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