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新設される地域包括医療病棟と在宅医療との関係はどうなる?

[2024.02.19]


先日、2024年度診療報酬改定で新たなタイプの病棟が新設されることが発表されました。「地域包括医療病棟」という名前の病棟です。

新たなタイプの病棟ができるのは10年ぶりのことで医療業界に身を置く者としてこれは要注目ですね。

なお、10年前は地域包括ケア病棟というものができています。 ここで「ん?何か名前が似ているな?」と思われる方も多いと思います。

そうなのです。地域包括ケア病棟ができ、そこから10年でそれなりのデータが得られたことで、似たようなコンセプトではあるが、「医療」機能の充実した病棟が必要であると国は判断したのでしょう。

・地域包括ケア病棟 「地域包括」+「ケア(介護)」

・地域包括医療病棟 「地域包括」+「医療」

「地域包括」という名前が付くということは在宅医療・訪問診療にも大いに影響を与えてくるものと考えられます。

 

そもそも地域包括ケアとは?

「地域包括ケア」や「地域包括ケアシステム」という言葉が出てきたのはここ15年くらいかなあと思っていたのですが、よく調べてみると2003年からこの言葉が使われはじめたのようです。

地域包括ケアシステムについてはこちらの医師会のページに分かりやすい背景や説明がありますので、文章を一部抜粋しました。

「・・・平均寿命と健康寿命の差である約10年を、ずっと病院や施設で過ごすのは現実的ではありませんし、多くの高齢者は住み慣れた自宅や地域で暮らしたいと考えています。では、どうしたらうまくいくのでしょう?・・・健康寿命を延ばし、医療や介護が適切に連携して暮らしを支えられるようにする仕組みが「地域包括ケアシステム」なのです。 「「地域包括ケアシステム」は、厚生労働省が2003年から推進している考え方です。厚労省は、高齢社会にあっては、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」仕組みが必要だと述べています。」

https://www.med.or.jp/doctor-ase/vol13/13page_ID03main2.html#:~:text=%E3%80%8C%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%8C%85%E6%8B%AC%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E3%80%8D%E3%81%AF,%E3%81%A0%E3%81%A8%E8%BF%B0%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

また、厚労省には地域包括ケアシステムに関するページがあり中には次のように記されています。

「2025年(令和7年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

2025年はいわゆる団塊の世代が全て75才以上の後期高齢者となり超高齢化社会を迎える「2025年問題」を指しているものと思われます。

日本国は2025年問題を解決すべく2000年には介護保険制度がスタートし、2003年から「地域包括ケア」という言葉を使い着々と診療報酬改定を進めてきたのでしょう。

地域包括ケアとしては壮大な22年計画だったということが今になって分かります。

中間地点である2014年に地域包括ケア病棟が誕生し、PDCAを回しつつ2024年診療報酬改定にて最後の一手「地域包括医療病棟」を出してきたような気がします。

 

地域包括ケア病棟の位置づけ

上で述べてきましたが地域包括ケア病棟ができた背景としては2025年問題を見据えた日本国の意向があります。シンプルにすると以下2点の意図が強いと言われています。 1.高齢者が激増する日本において病院の病床(ベッド数)が不足するため在宅(ご自宅や施設)を病床の代わりに使い地域で見ていくようにしたい 2.元々ふわっとした定義であった「一般病床」という病床機能の一部を1.に機能特化した病床に転換していきたい この意向を叶えるために、国は「地域包括ケア病棟」を次のように定義し、病院経営にメリットのある診療報酬点数をニンジンに病床の転換を進めてきました。

地域包括ケア病棟協会より抜粋 https://chiiki-hp.jp/wp-content/uploads/2019/02/160629-00.pdf

③看護職員の数は13体1以上 地域包括ケア病棟は看護職員の数は、患者13人に対して1人以上となっています。急性期一般病棟の多くが患者10人に対して1人以上の看護師を配置するという基準ですから、それに比べると医療度が小さく「治療」をメインの目的としているわけではないということが分かります。

④⑧在宅復帰 地域包括ケア病棟は患者を長期間入院させる必要のある「療養」ではなく自宅や施設に帰すことを目的としているということが分かります。

⑤専従の常勤セラピストが必要 地域包括ケア病棟は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士というリハビリセラピストの配置が必要です。治療を終えた患者がリハビリを受けることで在宅に復帰させることを目的としていることが分かります。 つまり、地域包括ケア病棟は早期(60日以内)に患者を自宅や施設に帰すことを目指すための病棟です。在宅医療を担う当法人はこのような病棟である程度回復した患者さんを受け持つことも多いのです。

 

厚労省資料より抜粋 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039380.pdf

 

このように地域包括ケアシステムや地域包括ケア病棟について見ていくと、当法人が担う在宅医療は地域包括ケアシステムの中で重要な機能を果たしているということもよく分かってきますね。

 

新設される地域包括医療病棟とは?

地域包括医療病棟は「医療」と名が付くためより医療に特化した病棟となりますが、2024年診療報酬改定に当たっての資料にある次のような背景があるものと考えられます。 軽傷・中等症の高齢者の亜急性期の救急搬送が増えている。一方でこのような高齢者は急性期一般病棟(主に急性期医療に特化した大規模病院)では優先的には受け入れるべきではない。 なので、このような高齢者は地域包括ケア病棟(主に中小病院)で受け入れるべきであろうということが書かれています。

 

厚労省資料より抜粋 中医協 総 - 3  5 . 1 2 . 1 5 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001178990.pdf

一方で、地域包括ケア病棟は治療が終わった後のリハビリやケアを行う病棟であるため、亜急性期で治療の必要な患者を受け入れるのは難しいという声も上がっていました。 そこで地域包括ケア病棟よりも治療行為を濃厚に行え(看護師配置は13:1→10:1に看護師増)そして在宅復帰をさらに強く目指す(平均在院日数21日以内、リハビリセラピストは2人以上配置など)という目的と基準をもって地域包括医療病棟が新設されたと考えられるでしょう。

在宅医療への影響

当法人の訪問診療で診ている患者さんで、体調悪化等で病院での高度加療が必要となる場合は、適切な病院への搬送や入院といった連携を行っています。

搬送先の病院の選び方については、連携先の病院であったり、加療するための適切な診療科があるか、患者さんが過去に通院していたか、病院側に空きがあるか、場所は近いかなど様々な要素を総合的に判断してしています。 ク

リニック側は、搬送先の病院の病棟タイプについて意識することはあまりありません。一方、病院側は病棟タイプによって様々な制約を受けるため患者さんの受け入れを選ばざるを得ないという実情がますます増えてくることでしょう。

このような実情を知っていくことは、患者さんにとって適切な病院をスムーズに選ぶことや、医療資源の適正化に重要なことでしょう。

今後は病床の機能の分化がさらに進み、「とりあえずいつも通り●●病院にお願いしよう」というのができなくなってくるかもしれません。もちろんより適切な病院(地域包括医療病棟などを持っている)が他にあるので、適切な病院と連携を進めていくことでより効率的な地域包括ケアシステムが構築されていくものと考えられるでしょう。 また、我々はそのシステムの中で在宅医療という一機能を担い、日本国や地域に求められる医療機能を提供していくことに努力をする必要があるでしょう。

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