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「ききょう会」が力を入れている 在宅ホスピスケア・緩和ケアとは No.1

[2023.02.08]

ききょう会では「在宅ホスピスケア」に力をいれておりますが、在宅ホスピスケアを追求すればするほど、在宅ホスピスケアを一言で言い表すことが困難ということに気づかされます。

在宅ホスピスケアの奥深さや、とらえ方が人によって変わる概念と思われます。

ききょう会が大事にしている在宅ホスピスケアについて、現場のスタッフからインタビューを行うことができましたので、少しでもききょう会の在宅ホスピスケアの理解の一助になればと思っております。

※なお、このインタビューは、ききょう会とは関係のない第三者からスタッフへインタビューを行ってもらっております。

 

インタビュイープロフィール

 医療法人社団ききょう会

看護師(勤続年数:3年)

 

 

(こちらのインタビューでは便宜上当院の看護師を「看護師」、訪問看護ステーションの看護師を「訪問看護師」と表記しております)

 

■ききょう会で働こうと思ったきっかけや前職と現職の看護師業務の違いについて教えていただけますでしょうか?

前職では大学病院に5年間勤務し、病棟で呼吸器内科、血液腫瘍内科、外来で呼吸器内科、感染症、腎臓内科、消化器内科等を経験しました。

この時に受け持った患者さんが50代の末期の肺がんでしたが、とてもユーモアがある方で私に対してもフレンドリーに接してくれました。

このフレンドリーさですのでやはりお友達も多いようでしたが、病棟では面会の制限があるためいろいろな人が会いに来づらいという状況に満足がいかない様子でした。また、食事も病院食のため満足できず、好きなものを食べたいよ、最期くらいは家で過ごしたいよと言っていました。

このような状況の中、当時の主治医は患者さんに対し最期の時間をどこで過ごしたいかを聞く場面があり、患者さんは自宅で過ごしたいとおっしゃったので、主治医は自宅における療養をすすめました。

末期の肺がんの患者さんで医療依存度が高いので本当に自宅で大丈夫なのか私は心配でしたが、地域の在宅医療と訪問看護を利用することで自宅でも療養することが可能ということでした。

 

その患者さんは退院後もわざわざ私に連絡をくれました。

在宅医療で先生も来てくれるし、訪問看護ステーションから訪問看護師さんも来てくれるから安心だよ、好きなものも食べられているし、友達もいっぱい来てくれていると満足した様子でした。

私はそれを聞いてとても安心しましたし、うれしかったのを覚えています。

 

その患者さんは自宅へ戻られたあと1か月くらいで亡くなりました。

しかし患者さんが満足な様子を電話で聞いたり、家族の報告で本人が満足だった様子を聞くと、病院で医療を提供することだけが正解ではないのだと思いました。

高度な医療を提供するためには入院が必要になりますし、患者さんの自由度は大きく低下してしまいます。人生の最期においては患者さんがご自宅で満足いくような時間を過ごせることの大切さ、そしてそれをサポートできる医療の在り方もあるということに気づかされました。

 

このような経験から自宅での終末期の患者さんのケア「在宅ホスピスケア」に強みがあり、「在宅緩和ケア充実診療所」の認定も受けているききょう会で在宅医療(訪問診療)を学びたいと考え入職することになりました。

ききょう会は在宅医療を行っているクリニックですので、クリニックから患者さんのご自宅に医師と一緒に訪問して診療のサポートを行っています。患者さんやご家族、訪問看護師と密にコミュニケーションをとり患者さんにとってその時に最善の医療を提供できるようにしています。

 

 

 

■在宅医療(訪問診療)を行っている医療機関は多くありますが、ききょう会の特徴を教えてください。

比較的安定している患者さんも多くいらっしゃいますが、当院では医療依存度が高く在宅ホスピスケアを必要とするような患者さんの割合が他のクリニックに比べて多いことが特徴だと思います。

医療依存度の高い患者さんは急変も起こりやすく、それに伴いご家族へのストレスが高くなるケースが多くあります。

こまめに患者さんの状態を把握し先読みで動くこと、そしてご家族に対するケアも同時に行うのが大事になってきますのでこのあたりの経験値が高いのはききょう会ならではと思います。

 

 

■在宅ホスピスケアを提供する患者さんはどのような患者さんが多いですか? またその患者さんにはどのようなケアがなされますか?

病院に入院していたがんの患者さんが当院へ新たに紹介されるというケースが多くあります。その場合、自宅で過ごしながらも疼痛の緩和を行うような医療(緩和ケア)を提供しています。

具体的には、飲み薬や貼り薬、急に痛みが強くなった時の頓服薬、皮下注射による点滴などを上手に使うことで苦痛なく穏やかに生活することが可能になります。

飲み薬や貼り薬では疼痛緩和の効果が低い場合、CADDポンプやシリンジポンプによる持続皮下注射を行ったり、麻薬では取り切れない苦痛を鎮静剤で緩和するような高度な緩和医療も提供しています。

 

また、ききょう会では独自の「緩和セット(座薬セット)」を準備し、すぐに駆けつけられる訪問看護師がいつでも疼痛緩和処置を行えるようにしています。これは、患者さんのために痛みや苦しみをできるだけ早めに取り除くためであり、患者さん本人やご家族へのストレスを大きく抑えることに役立ちます。

 

 

■在宅ホスピスケアはがんの患者さんのみが対象になるのでしょうか?

がんの患者さんだけではないですね。がん以外の患者さんも多くいらっしゃいます。

例えば、心不全の末期の患者さんです。このような患者さんには心臓の負担を抑えるために在宅酸素療法(HOT)を使用することが多いです。

このような患者さんは終末期には、食事や飲水の量が減っていく傾向にあります。この場合、水を飲ませようとしても患者さんの体が受け付けなかったり、点滴をしてもかえって体が浮腫んでしまったりします。

一方で、ご家族側からすると何もしてあげられないというのは見殺しにしてしまっているような気分になり大きなストレスになるようです。

ご家族のストレスを少しでも和らげるため、少しの点滴を試み、患者さんのお体の方の受け入れ状況が芳しくない場合はすぐに点滴を中止するなど、患者さんのお体とご家族のお気持ちも考えながら処置を行っていくことになります。

 

 

 

■インタビューの随所で患者さん以外の「ご家族」や「訪問看護師」というワードが多く出てきました。 かなりこちら2者とのコミュニケーションを重要視されているということなのでしょうか?

在宅医療は保険の制度上、通常は2週間に1回または1週間に1回の定期訪問を行うことになっています。

緊急の場合は臨時往診を行っていますが、基本的には定期往診日から次の定期往診日の間は訪問看護ステーションから来る訪問看護師が対応を行うことになります。つまり患者さんやご家族の最も近くに居るのが訪問看護師になります。

その訪問看護師から患者さんの変化を密に聞き取ることで、情報を集め、これを医師に提供し、医師の判断の質を上げていくのが私の重要な仕事です。そして医師の指示を的確に訪問看護師に伝え、患者さんの心配や苦痛の時間をできるだけ短くするようにしています。

ご家族が不安にならないように先手を打ってご家族のケアも同時にしていくのが私の大事なミッションになるため、ご家族や訪問看護師との密なコミュニケーションは不可欠なのです。

 

■患者さん、ご家族、医師、訪問看護師のコミュニケーションのハブになっているのが看護師 なのですね。              

何か工夫されていることはありますか? 

そうですね。最も大事なことは、医療を受けられている患者さんやそのご家族が不安にならないようにすることだと思います。

緩和ケアを受けている時点で患者さんやご家族にとってはすでに大きなストレスです。さらなるストレスをできるだけ与えないようにしてあげないと良い医療にはならないと思います。

さらに、患者さんやご家族の最も近くにいる訪問看護師がストレスになってしまってはいけないので、訪問看護師にもできるだけ不安を与えないよう密にコミュニケーションをとるようにしています。訪問看護師とはコミュニケーションを頻繁にとり、訪問看護師と私の間で連絡をしやすいような関係を築いくことでこれを実現しています。

このようにすることで、患者さんの些細な反応でも私のところに連絡がくるようになり、この反応のアセスメントにつながります。そして医師の判断がなされ、患者さんのケアに役立つことになるのです。

 

また、MCS(メディカルケアステーション)という多職種連携のためのITシステムも利用することで1人の患者さんに対して医師、看護師、相談員、訪問看護師、ケアマネジャーがコミュニケーションをとれるようになっています。

例えば、褥瘡の写真を訪問看護師に撮影してもらい、当院医師が指示をするなどスピーディーに正確に状態を把握することができ、診療の質を上げています。

 

 

 

■インタビューを終えて・・・

このインタビューを受けたことで、いろいろな患者さんを思い出しうれしいと思いました。

色々な方と何度もコミュニケーションをとってケアをしているので、今でも具体的に鮮明に思い出すことができます。それくらい患者さんに寄り添ってケアを行っていたのだなと実感します。そしてこれらの思い出は、私にとって良い思い出として思い起こされるのです。

これは医療従事者として在宅ホスピスケアを提供するものとして、誇らしいものだと思います。

 

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