令和8年度厚生労働省概算要求から見る在宅医療の未来
毎年厚生労働省から発表される「来年度の予算案(概算要求)」には日本の医療政策の未来が隠されています。
この概算要求(令和8年度)が先日発表されましたので当法人に関連の深そうな項目からいくつかご案内したいと思います。
国の予算と聞くと、少し難しくて遠い話に聞こえるかもしれませんが、日本の医療がどちらの方向へ進もうとしているのかを示す未来の設計図で、私たちの仕事や暮らしに直結するとても大切な情報だと考えています。
特に在宅医療がこれからどうなっていくのか、その未来像を見ていきます。
昨年度には同様の記事を以下にまとめています。日本の医療政策の変遷が少しずつ分かります。
「病院から在宅へ」の流れはさらに加速する
まず、2026年度の予算案が示す最も大きな方向性として「医療の主役となる場所を、病院から地域、そして自宅へ」という流れを、これまで以上に進めていくという国の強い意志が見えます。
背景にあるのは、ご存知の通り日本の急速な高齢化です。2040年には高齢者人口がピークを迎えると言われ、多くの方が医療や介護を必要としながら生活する時代が目前に迫っています。
同時に「病気になっても、人生の最期まで住み慣れた我が家で過ごしたい」と願う方が増えていることも、この流れを後押ししています。
また、当法人もこの考えに賛同し、医療を提供している所存です。
患者さんやご家族にとっては、「自宅で療養する」という選択肢が、より当たり前で質の高い医療を受けられる安心な選択肢になっていくことを意味します。
地域連携に関わるソーシャルワーカーやケアマネジャーの方にとっては、患者さんが病院からご自宅へスムーズに移行し、地域で安心して暮らし続けるための橋渡し役としての役割が、ますます重要になることを示しています。
では、国は具体的にどのような方法で、この在宅医療を力強くサポートしようとしているのかを見ていきます。
在宅医療に関わる新規予算や拡充予算
在宅医療の効率化のためのデジタル化及びICT導入促進に係るモデル事業
新規で1.1億円の予算が付いています。
在宅医療の患者数が増える一方で、生産年齢人口の減少(つまり医療従事者が減少)が伴うため、デジタルやICTにより在宅医療の質を担保しつつ、効率化を図る試みです。
自治体レベルのモデル事業で、ICT導入や導入円滑化の伴走支援に関する補助となっています。
このような計画をしている自治体、そして地域の医療機関は自治体を巻き込んでやってみると良いかと思います。
(厚生労働省 R8年度 概算要求資料より引用)
看護現場におけるデジタルトランスフォーメーション推進実証事業
新規で1.6億円の予算がついています。
在宅医療においては2040年に向け在宅医療患者が増大する中、限られた人材で訪問看護など効率的に行っていく事を目指し、そのデータやエビデンス獲得のための実証事業になります。
(厚生労働省 R8年度 概算要求資料より引用)
特定行為に係る看護師の研修修了者加速的養成事業
前年度5.1億円から今年度7.0億円に拡充しています。
「特定行為」とは、専門的な研修を修了した看護師が、医師の包括的な指示(手順書)のもとで行うことのできる、従来よりも踏み込んだ医療行為のことです。例えば、脱水時の点滴の調整や、気管チューブの交換、褥瘡(床ずれ)の処置などがこれにあたります。
特に在宅医療分野の推進のためにという記述がありますので、国がこの特定行為研修への支援を大幅に強化するということで、在宅の現場で活躍できる高いスキルを持った看護師を増やし、ご自宅で提供できる医療の質と範囲を広げていくということでしょう。
これにより、患者さんは医師を待たずにタイムリーに必要な処置を受けられるようになり、ご家族の安心感も増します。同時に、医師の負担も軽減され、より多くの患者さんの診療に時間を充てられるようになります。まさに、在宅医療チーム全体の能力を底上げする重要な取り組みと言えるでしょう。
(厚生労働省 R8年度 概算要求資料より引用)
腎不全患者に対する緩和ケア当の総合推進事業
新規で1.0億円の予算がついています。
緩和ケアというと「がん」というイメージが先行しますが、腎不全においても多くの緩和ケアを必要とする患者さんがいます。
この領域においては、制度や教育がまだまだであるということから創設された事業です。
とくに当事業では在宅医療での腎不全患者の緩和ケアまで見据えているようです。
(厚生労働省 R8年度 概算要求資料より引用)
その他注目の予算
人生の最終段階における医療・ケア体制整備等事業
前年度55百万円から今年度1.1億円に拡充しています。
患者さんがどのように人生の最期の時間を迎えたいかに関し、啓発を行う事業です。
ききょう会では最後の時間をご自宅で支援できるような医療を提供しています。
ききょう会の提供する在宅ホスピスケア
(厚生労働省 R8年度 概算要求資料より引用)
生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)パイロット事業
口腔ケアは、高齢者の死因上位の誤嚥性肺炎の予防など、在宅療養中の高齢者の全身の健康維持に極めて重要です。
「骨太の方針2025」にも盛り込まれた「国民皆歯科健診」の実現に向け、職域(企業など)で簡易なスクリーニングツールを用いた歯科疾患のリスク評価や有効性を検証するパイロット事業がはじまります 。
まとめ
本年度の概算要求では、在宅医療分野でのDX化や看護師支援への予算が気になりました。
当法人ではICTの積極利用により、業務の効率化と医療の質の向上を目指しています。
例えば、診療補助生成AIやクラウド電子カルテ、医療介護従事者向けコミュニケーションツール「MCS(MedicalCareStation)」や病院や緩和ケア病棟との連携のためのICTツール「CAREBOOK」など最新のデジタルツールを積極的に利用しています。
また、当法人の巣鴨ホームクリニックは公益社団法人日本看護協会の特定行為研修(実習)協力施設となっており、特定行為を行える看護師の要請に努めており、特定行為の行える看護師が増えることを後押ししていきたいと考えています。
医療法人ききょう会は東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)の提供を行っており、特に在宅ホスピスケア・緩和ケアに力を入れています。
・巣鴨ホームクリニック
豊島区、北区、文京区、板橋区
・東十条クリニック
豊島区、北区、文京区、板橋区、足立区
・花畑クリニック
足立区、葛飾区、埼玉県草加市、八潮市
・伊奈クリニック
埼玉県上尾市、桶川市、伊奈町、蓮田市、さいたま市見沼区・北区・岩槻区
