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「ききょう会」が力を入れている 在宅緩和ケア・ホスピスケアとは No.3

[2023.02.21]

ききょう会の「在宅ホスピスケア」について、インタビューをシリーズで掲載しております。

今回はなかなか一言では言い表すことのできない在宅ホスピスケアについて、「病院でのケアとの違い」「在宅ホスピスケアならではのコミュニケーション(患者さん以外のご家族や、訪問看護師、ケアマネなど)」「医師としての考え方」などを主眼にききょう会に勤務している医師にインタビューをおこないました。

※なお、このインタビューは、ききょう会とは関係のない第三者からスタッフへインタビューを行ってもらっております。

   

 

■先生が定期的に診られている患者さんは何人くらいで、そのうち何人くらいが在宅ホスピスケア/緩和ケアの患者さんでしょうか?

花畑クリニックは常勤医師が3名、非常勤医師が5名の体制で運営しております。
約300人の患者さんが来院されており、5~6割が緩和ケアの患者です。
以前は病院と在宅半々くらいでしたが、コロナが流行って以降は病院に入院されると会えなくなるので、今は在宅が中心です。
過去に、患者さんが病院に行ったら立てなくなって帰ってきたというケースがありました。
患者さんが変わり果てた姿で帰ってきた場合、残された家族にとっては理解納得しがたいものです。

また、近年ではどのように人が亡くなってくかを知らない方が多くいます。
昔は3世代とかの家族だったのでこの辺りは分かる方もいましたが、核家族化に伴ってこのような変化が出てきているのだと思います。
特に現代は医療が発達しているので、病気を患ったら何となく病院に…という意識が強くあり、親をどう看取るかを判断ができない、責任もって自分たちで看ますというご家族も少ないと感じています。

加えて、老々介護という言葉が一般的となりつつありますが、
患者さんの世話をしてくれる人を探すことも、世話をすることも難しくなっていると思います。
誰かに来てもらうとお金もかかる、子供に介護してもらおうとしても子供は子供で家庭があるのでなかなか難しいという時代の中で訪問看護も含めて我々がサポートすることができると思います。
病院の方で手厚くみてくれることも少なくなったので、受け皿として在宅医療が必要になっていると感じています。

■現在の訪問診療を行われる前後で、診療の考え方で変わったことがありましたら教えてください。

私は循環器が専門なので心不全の末期患者さんを多く診察しています。
例えば通院できなくなった心不全の方や治療ができなくなった心不全の方などで、
がん疼痛緩和の専門先生の受け持ち患者の8割は、がん終末期患者の緩和ケアをしています。

大学病院での勤務医時代は患者さんに病名をつけ、その病気に関するガイドラインをベースに診断、処方を行うということが病院としての共通認識でした。
つまり、通院している患者さんの特定の病気の治療のみが対象となり、患者さんの体全体や生活のことよりも、ガイドライン通りの薬を複数種類飲んでもらうことを優先しがちでした。

一方で患者さんは複数の病気を持ち複数の病院に通院していることも多いです。このような患者さんの場合、複数の病気の薬を飲むため、多い人は毎朝10錠以上という大量の薬を飲んでいたりします。
体力の少ない高齢者の場合、嚥下力も落ちており、一日に3度も10錠を超える薬を飲むというのはとても苦痛なことなのです。
私が訪問している患者さんの殆どはこのような患者さんですので、患者さんの生活スタイルと向き合い、患者さんのQOLと天秤にかけ、一錠でも減薬できないかと考えるようになりました。
例えば、動脈硬化性の疾患を予防する薬を飲んでいる患者さんです。
70歳代の患者さんであれば動脈硬化を予防することはとても大事ですが、90歳を超えるような患者さんの場合は動脈硬化を予防するよりも残りの人生のQOLを上げることを大事にするケースも出てきます。
このような場合には、患者さんやご家族と相談し、患者さんの残り人生のQOLを優先して最低限の薬に絞ることも検討することがあります。

その方の生活スタイルや患者さんの身体的にも精神的にも負担にならないように考えています。
例えば心不全の薬の場合、とても良い薬ですがおしっこが続いて夜がつらいなどの症状があります。
病院であれば尿道カテーテルや常駐の看護師さんがいるのですぐに対応できますが、自宅では難しくなります。このように、ガイドライン通りの診療が全て答えではありません。

■ききょう会は在宅ホスピスケアを重要視そして得意とされていますが、どのようなことを意識して取り組まれていますか。先生の「考え方」の面と「実際に取り組まれている実例」について教えてください。

このような患者さんに対して、家族はプロではないので何もできずに動揺してしまいます。
通常は週に1回の訪問になりますが、そういった患者さんを受け持った時は週に2回~3回訪問して
とにかく患者さんやご家族に顔を出すようにしています。
診察を受けた病院から言われていたことだけでは不安が残ります。
そこで、私達が頻繁に通って話を聞いてあげることで、不安を取り除くことができると思います。
患者さんの状況は刻一刻と変わる中で、緊急の場合でもすぐに相談できて、すぐ答えが返せるような体制をとっています。特に週明けの月曜日と週末の金曜日は日が開いてしまうと患者さんの状態が気になるので、金曜日に何とか時間を作って訪問しています。

日々の診療体制の面でも先生方に余裕を持たせ、いつでも対応できる先生を1名クリニックに配置しています。
また、訪問看護師とはコミュニケーションを常に大切にし、訪看からのリアルタイムな連絡やMCS(メディカルケアステーション)という他職種連携のためのITシステムを通じて、早い判断を取れる体制づくりをしています。とにかく患者さんやそのご家族の不安を拾って解消していく事が大切です。
患者さんの家族が不安になったらすぐ解消するという対応に、ご家族からは「話を聞けてよかった」という声を掛けてくださるので、どの先生、スタッフもやりがいに繋がっています。

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