睡眠時無呼吸症候群(SAS)をめぐる治療や保険適用拡大について最前線をお届け
毎朝起きても疲れが取れない。日中の会議中や運転中、耐えがたい眠気に襲われる。そして、ご家族から「昨夜、呼吸が止まっていたよ」と指摘されたことはありませんか?
これらは単なる「寝不足」や「疲れのせい」ではなく、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)という、全身の健康を静かに蝕む恐ろしい疾患のサインかもしれません。
長年、SASの治療といえば、就寝時にマスクを装着して空気を送り込む「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」が標準治療とされてきました。しかし、「マスクが煩わしくて続けられない」「出張や旅行に持っていくのが大変」といった理由で、治療を途中で挫折してしまう方が後を絶たないのが実情でした。
また、医療機関側としても「機械を貸し出して、月に一度データを見るだけ」という形骸化した診療が一部の医療機関で常態化しているという課題もあるとされています。
しかし今、2026年という年を境に、日本のSAS診療は転換期を迎えています。
例えば、新しい「治療薬(飲み薬や注射薬)」の登場、そして国の診療報酬改定による「保険適用基準の大幅な緩和」そして「遠隔モニタリングの義務化」です。
放置すれば命に関わる「睡眠時無呼吸症候群」
まず前提として、SASがなぜこれほどまでに医学的に問題視されているのかをご説明します。
SASは、睡眠中に喉の筋肉が弛緩し、舌の付け根などが気道を塞いでしまうことで、何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)する疾患です。この状態が続くと、体は深刻な酸欠状態(低酸素血症)に陥り、心臓は全身に酸素を送ろうと無理をして働き続けます。
その有病率は驚くほど高く、世界では軽症以上の患者が9億3600万人、日本国内でも潜在患者数は約2200万人(中等症から重症に限定しても約900万人)に及ぶと推定されています。 SASを放置することは、毎晩自らの首を絞めながら眠っているようなものです。睡眠が分断されることで交感神経が過度に緊張し、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、心房細動といった致死的な心血管イベントのリスクが跳ね上がります。また、日中の強烈な眠気は、交通事故や労働災害の引き金ともなり、社会全体にとっても見過ごせない問題となっています。
「たかがいびき」と軽視することは、未来の健康寿命を放棄することに他なりません。だからこそ、医療界はより効果的で、患者様が継続しやすい治療法の確立を急いできたのです。
以下のように日本経済新聞でも取り上げられるほど日本にとっては深刻な問題となっています。
日本経済新聞社WEBサイトより引用
【2026年度 診療報酬改定】CPAP導入のハードルが大幅緩和。「中等症」からの早期治療が可能に
2026年6月1日、日本のSAS診療において重要な制度変更が行われました。それが、CPAP治療を開始する際の保険適用基準の一つであるAHIの大幅な引き下げです。
AHI(無呼吸低呼吸指数)とは、睡眠1時間あたりに無呼吸や低呼吸が起こる回数を示す指標です。これまでの日本の制度では、CPAPを保険診療で開始するためのハードルが諸外国と比べても高く設定されていました。 しかし、2026年6月の改定により、以下のように基準が緩和されました。
| 検査種類 | 緩和前 | 緩和後 |
|---|---|---|
| 簡易検査 | AHI 40回/h以上 | AHI 30回/h以上 |
| 専門施設での精密検査(PSG) | AHI 20回/h以上 | AHI 15回/h以上 |
この変更が意味することを考えます。
これまで、簡易検査で「AHIが35回」であった患者様は、「重症一歩手前」という極めて危険な状態にもかかわらず、保険適用で治療を受けるためには、わざわざ仕事を休んで専門の病院に一泊し、高額な精密検査(PSG)を受け直さなければなりませんでした。
その結果、「面倒だから」と治療からドロップアウトしてしまう方が大勢いらっしゃいました。
しかし今回の改定により、簡易検査でAHI30以上であれば、入院による精密検査を経ることなく、外来レベルですぐに保険適用でCPAP治療を開始できるようになりました。また、精密検査でAHI15〜19の「中等症」と診断され、「数値が基準に届かないから様子を見ましょう」と放置されていた方々も、正式な治療対象として救済されることになったのです。 これは、医学的エビデンスに基づき「中等症の段階から早期に介入し、心血管リスクを未然に防ぐ」という、国を挙げた予防医療への転換を意味しています。
「貸し出して終わり」ではなくCPAP遠隔モニタリングへ
AHIの基準が緩和され、CPAPを始めやすくなった一方で、国は「治療の質と継続性」に対して厳しい基準を入れました。
CPAPは、正しく毎晩装着して初めて効果を発揮する治療です。しかし従来は、患者様が月に一度クリニックを受診した際に、医師が過去のデータをざっと確認するだけの診療が少なくありませんでした。
2026年度の改定では、CPAPの管理料である「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2」の点数が実質的に減額され、さらに「CPAPの1日平均使用時間が1時間未満の場合は、算定不可(保険請求できない)」という規定が新設されました。
その代わりに、テクノロジーを活用して質の高い管理を行う医療機関を高く評価する仕組みが導入されました。それが「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算」の新設です。
これは、クラウド通信機能を用いて患者様のCPAP使用時間、マスクからの空気漏れ、残存する無呼吸の回数などを恒常的に遠隔モニタリングし、そのデータに基づいて生活指導や機器の設定変更を継続的に行う体制を整えている医療機関にのみ認められる加算です。
つまり、IoTなどのデジタル技術を駆使して患者様のアドヒアランス(治療への積極的な参加と継続)を日々監視し、伴走するという医療機関としての役割が強くなったのです。
なお、当法人では元々これら項目についてはモニタリングしてきておりました。
SASは「薬で治す」時代となるのか
CPAP適用の制度進化と並行して、2026年にはSAS治療における「内科的アプローチ(薬物療法)」が産声を上げはじめました。
これまでは物理的な方法(空気を送り込む、マウスピースを入れる等)しかなかった領域に、全く新しいアプローチが登場しました。
肥満型SASの治療「ゼップバウンド(チルゼパチド)」
※当院では2026年7月現在ゼップバウンドの処方は行っておりません。
SASの最大の原因の一つは「肥満」です。首周りに蓄積した脂肪が気道を物理的に圧迫するためです。
肥満症改善のためのGIP/GLP-1受容体作動薬である「ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)」が、「BMI 27以上かつ中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」を適応症として2026年に正式に承認されました。
ゼップバウンドは、強力な食欲抑制作用とインスリン分泌促進作用(デュアルインクレチン作用)を持つ薬剤で、肥満症の改善の結果、SASにも効果があるとされるデータが得られています。
2026年7月現在、現状当院では肥満症改善のためのゼップバウンド処方は行っておりませんが、今後は処方薬によるSAS治療が広まっていく可能性を示している一例と捉えております。
田辺ファーマWEBサイトより引用
非肥満型・日本人向け 気道筋を強化する経口薬「AD109」
一方、日本人には「太っていないのにSASになる」患者様が大勢いらっしゃいます。これは、小顎など骨格的な要因に加え、睡眠中に気道周辺の筋肉が過度に弛緩してしまうことが原因です。
こうした非肥満型の患者様に向けた新薬の開発も、最終段階を迎えています。米国Apnimed社が開発中の「AD109」は、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(アトモキセチン)と抗ムスカリン薬(アロキシブチニン)を組み合わせた、1日1回就寝前に飲むだけの錠剤です。 この薬は、脳の呼吸中枢に働きかけ、睡眠中であっても喉の筋肉(気道筋)を適度な緊張状態に保つことで、気道が塞がるのを直接的に防ぎます。
第3相臨床試験では、プラセボ群と比較してAHIを約44〜55.6%も低下させ、CPAPに不耐性を持つ患者様にとって極めて有効な代替手段となることが示されました。米国では2026年後半から2027年前半にかけての市場投入が見込まれており、日本においても塩野義製薬が合弁会社を設立して臨床試験を急ピッチで進めています。 マスクもホースも不要で、寝る前に薬を飲むだけで無呼吸が治る。そんな未来が近づいてきています。
塩野義製薬WEBサイトより引用
テクノロジーで患者様に寄り添う。ききょう会の「SASオンライン診療」
ここまで解説してきた「AHI基準の緩和による早期治療の解禁」「質の高い遠隔モニタリングの義務化」、そして今後現れる「未来の薬物療法」はより良いSAS治療に繋がっていくものと捉えています。
これらの医療の進化を、患者様が最も負担なく、そして最も効果的に享受できるよう、医療法人社団ききょう会はSASオンライン診療を推し進めています。
当院のオンライン診療には、次のような特徴があります。
通院ゼロで完結。自宅に届く検査キット
多忙なビジネスパーソンにとって、「病院の予約を取り、何度も通院する」こと自体が最大のハードルでした。ききょう会では、24時間Webから予約いただき、スマートフォンでビデオ通話による診察を受けられます。 診察後、ご自宅に簡易睡眠検査キットを郵送します。患者様はいつものベッドで、いつも通りに寝るだけ。前述の通り、2026年の制度改定により、この自宅での簡易検査でAHI30以上が出れば、そのままオンライン手続きでCPAP治療を開始することが可能です。仕事を1日も休む必要はありません。
「充実管理体制」を凌駕するクラウド遠隔モニタリング
ききょう会が提供するCPAP機器は、クラウド通信機能を搭載しています。患者様の睡眠データ(使用時間、無呼吸の回数、マスクの空気漏れ)が自動で同期されます。
最新情報へのアクセス
ききょう会は「ただCPAPを貸し出すだけのクリニック」ではありません。私たちは患者様の「根本的なQOL(生活の質)の向上」を第一に考えています。 CPAPの継続がどうしても苦痛な方、あるいはBMI27以上で肥満という根本原因を解決したい方に対しては、オンライン診療を通じてフォローアップし、「ゆくゆくはCPAPを手放す」という希望に満ちたゴールを共に目指します。また、「ゼップバウンド」「AD109」のような薬が日本で承認される際に、スピーディーに患者様に提供できる体制を整えています。
ききょう会の SASオンライン診療であなたのQOLを取り戻す
いびきや日中の強い眠気は、決して「あなたの怠慢」ではありません。体からの重大なSOSサインです。 かつては治療のハードルが高く、諦めてしまった方も多いかもしれません。しかし2026年現在、制度の壁は取り払われ、画期的な新薬という新たな武器も誕生しました。
良質な睡眠を取り戻し、活力ある健康な明日を迎えるために。まずは一度、ききょう会のSAS完全オンライン診療へお気軽にご相談ください。
