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進化を続ける「医療用生成AIツール」の最前線

[2026.07.02]

私たちききょう会では東京都から埼玉県で、ご自宅や施設で療養される患者様を支える在宅医療・訪問診療、在宅緩和ケアを提供しています。

その日々の診療で、ききょう会が大事にしていることがあります。それが、デジタルテクノロジーを積極的に取り入れ医療の質を上げることです。

 

これまでに当WEBサイトのブログでは、

2024年4月

勤務医の時間外労働規制(医師の働き方改革)の開始と、黎明期の生成AIの動きを捉えた記事(医師の働き方改革と生成AIの活用

2025年7月

自律的に動作するAIエージェントの出現と、診察室での自動カルテ作成ツール「medimo」の活用を検証した記事(医療・介護現場における生成AI・AIエージェント活用レポート

を公開し、医療デジタル技術の進化について記録、発信し皆様にお伝えしてきました。

そして、前回の発信から約1年が経過した2026年6月現在 、医療現場の生成AIはもはや「実験段階」を完全に脱し、国の研究プロジェクトや大病院、地域クリニックへと急速に溶け込む「本格的な社会実装期」へと突入しています。

今回は、2026年現在の日本で活躍する医療療用生成AIツールについてまとめました。これらが医療現場をどう変え、巡り巡って患者様へどのような安心感をもたらしているのかを解説します。

なぜ今、医療の現場に「生成AI」が必要なのか?

かつての「電子カルテ」は、ただキーボードで打ち込んだデータを保存するだけの「電子の箱」でした 。そのため、IT化が進めば進むほど、医師は診察中にパソコンの画面ばかりを見つめ、カタカタとタイピング音を響かせるという本末転倒な光景が生まれてしまいました。

しかし、人間の言葉や文章の「文脈」を理解できる生成AIの登場により、この構造は劇的に変化しました 。AIが診察中の「自然な対話」から医学的に必要な情報を抽出し、カルテや紹介状、退院サマリーなどの下書きを自動で作成できるようになったのです。

私たちはこれを、単なる「医療従事者の労働削減」のためではなく、「医療従事者がキーボードから手を離し、患者様としっかりと目線を合わせ、対話する時間を取り戻すためのインフラ」として極めて重要なことだと考えています。

こんなにある!医療用生成AIツールまとめ

現在、医療機関で実際に稼働し、業務削減や診療の質向上につなげている7つのツールについて調査しました。

『ユビー生成AI』:受診前から始まる、地域医療のなめらかな連携

Ubie(ユビー)株式会社が提供する「ユビー生成AI」は、2024年の本格提供からわずか1年半で、大学病院10施設以上を含む全国100以上の病院にスピード導入されているようです。

機能と特徴

月間1,300万人以上が利用する生活者向け症状検索エンジン「ユビー」の広範なネットワークと連携できるのが最大の強みです。患者様が自宅でスマートフォンから入力した問診票データを、AIが医師の使う高度な医学専門用語へと瞬時に「自動翻訳」し、電子カルテの準備を整えます。

導入事例

恵寿総合病院:これまで膨大な時間を要していた「退院時看護サマリー」の作成にかかる時間を42.5%削減し、看護スタッフの心理的負担を27.2%軽減することに成功しています。

南部徳洲会病院:インフォームド・コンセント(IC、医師による治療方針の説明と同意)の録音データの要約など、月間4,000件に及ぶ業務に音声要約機能を適用。これによって月あたり約200時間もの業務時間創出を達成しています。

ユビー生成AI WEBサイトより引用

 

『medimo(メディモ)』:診察室の対話を5秒でカルテ草案へ

株式会社medimo(スズケングループ)が開発するAIクラーク「medimo」は、診察室における1対1の対話録音に特化した、スマートで軽快なAIシステムです。

機能と特徴

2025年7月のブログでもご紹介した通り 、使い方は診察開始時に録音ボタンを押すだけ。医療に特化して独自開発された高精度な音声認識AIが、患者様と医師の会話の中から薬の名前や病名などの専門用語を完璧に聞き取ります。診察が終わると、わずか5秒で電子カルテ用のSOAP形式カルテ草案を自動生成します。

Medimo webサイトより引用

 

導入事例

こちらは当院でも利用しております。全国1,000件以上の医療機関で導入されており、在宅訪問診療の現場でも愛用されています。導入前は訪問後にクリニックに帰った後に記憶を頼りにカルテを仕上げていた医師のカルテ作成時間が完全にゼロになり、毎日1時間半〜2時間の時間短縮に繋がったという確かな臨床成果が報告されています。

『OPTiM AI ホスピタル』:統計的に実証された時間半減とオンプレミスセキュリティ

株式会社オプティムが提供する「OPTiM AI ホスピタル」は、データの安全保護と、科学的な業務改善効果の実証において、圧倒的な信頼度を誇るシステムです。

機能と特徴

最大の特徴は、インターネットの外部接続を一切必要としない「完全オンプレミス(院内完結型)AI」を選択できる点にあります 。患者様のデリケートな個人情報や経過記録を院内のセキュアなローカルサーバー内で完結して処理できるため、情報漏洩リスクを物理的にゼロへと抑え込むことが可能です。

導入事例

社会医療法人 祐愛会 織田病院:佐賀大学総合診療部との「産学医連携プロジェクト」を立ち上げ、実際の患者様100例に対して段階的導入(Phased Implementation)による厳格な実証研究を行いました 。その結果、退院時看護サマリーの作成時間が54.2%削減(平均16分から10分へと短縮)されることが科学的に証明され、この成果は国際的な学術誌「Nursing: Research and Reviews」に論文として掲載されました。

アワード受賞:織田病院とOPTiMのこの「文書作成時間を半減させた取り組み」は、「病院DXアワード2025」において優秀賞を受賞し、業界内外で大きな脚光を浴びています。

OPTiM AI ホスピタル WEBサイトより引用

 

『AI Hippo 医療 Loop』:電子カルテを改修せず、APIボタン1つで最新AI化

AIデータ株式会社とMedTech Group株式会社が共同開発した「AI Hippo 医療 Loop」は、医療従事者とAIが循環的に知恵を高め合う「Human in the Loop」の思想に基づく次世代プラットフォームです。

機能と特徴

「既存の電子カルテシステムを変更することなく、API連携によってカルテ画面の直下にボタンを1つ追加するだけ」で導入できる点が極めて画期的です。申し込みからわずか30日という超短期間での実用デプロイが可能です。

外来・在宅での音声をSOAP形式のカルテへと変換する機能だけでなく、院内に散在するマニュアルや論文をRAG(検索拡張生成)構造化する「ドライブLoop」など、5つのコア機能を搭載しています。

導入事例

看護記録作成の劇的短縮:実証実験において、看護師が毎日ナースステーションで行っている経過看護記録の作成時間が約2時間から「30分程度」へと大幅に短縮(約75%削減)された定量データが報告されています。

多職種をつなぐ「生活情報の構造化」:在宅緩和ケアを得意とする私たち桔梗会にとって最も魅力的なのが、地域連携室で行われるケアマネジャーやご家族との面談音声の自動整理機能です。単なる病名だけでなく、「主訴」「家族構成・経済状況等の背景」「見えない不安などのペインポイント」「合意事項」「ToDoリスト」の6つの切り口にAIが瞬時に構造化してくれるため、多職種間での引き継ぎミスを完璧に防ぎます。

AI Hippo WEBサイトより引用

 

『NEXT Stage Document Assistant』:医師が作ったアルゴリズムで精度を高める

救急医療DXのフロントランナーであるTXP Medical株式会社が開発した「NEXT Stage Document Assistant (NSDA)」は、医療文書としての「正確性」に極限までこだわったツールです。

機能と特徴

開発を主導しているのは、臨床現場の実情を深く理解している現役の「医師エンジニア」たちです。生成AIだけに文章作成を丸投げするのではなく、同社オリジナルの「医師アルゴリズム(医療論理のルールベース)」と生成AIを組み合わせることで、ハルシネーション(AIの誤情報)を完全に制御し、プロの臨床医がそのまま署名できるクオリティの紹介状や退院サマリーを出力します。

導入事例

横須賀共済病院と亀田総合病院(計1,700床規模)における実用トライアルが開始されました。

長期に及ぶ複雑な入院患者様の診療経過記録から、紹介状(診療情報提供書)がわずか数秒で自動生成されるのを目の当たりにし、現場の病院長は「医療従事者が事務作業から解放され、スペシャリストとしての力を発揮する環境が整った」と強い手応えを語っています。

NEXT Stage Document Assistant WEBサイトより引用

 

『AIチャート byGMO』:個人クリニックの常識を変える、無料のオールインワンAIカルテ

IT大手のGMOインターネットグループ(GMOヘルステック株式会社)が提供する「AIチャート byGMO(ヘルステックONEに内包)」は、生成AIのパワーを最初からコアとして組み込んだ、画期的なレセコン一体型クラウド電子カルテです。

機能と特徴

驚くべきことに、初期費用0円、月額利用料0円(保険診療時の決済手数料2%のみの従量モデル)という、これまでの医療システムの常識を覆す料金設計で提供されています。

診察中の音声を自動で書き起こす「AIアシスト」を標準搭載しており、ボタン一つでSOAP形式への要約が可能です。

導入事例

予約、Web問診、電子カルテ、AIアシスト、オンライン診療、クレジットカードによるスマート決済までが、1つの統合システムとして完全に完結します。患者様にとっては、受診から決済、お薬の自宅配送までがスマートフォン1つでシームレスに完了するため、待合室での待ち時間が劇的に短縮される」という最高の快適さをクリニックへもたらしています。

AIチャート WEBサイトより引用

 

『GaiXer(ガイザー) / GaiXer Medical Agent』:会計待ちを一瞬にする、診療報酬の超高速自動算定

株式会社FIXERが開発するエンタープライズ向け生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」は、すでに多くの自治体や官公庁、金融機関で稼働している、ISMAP-LIUの厳格な政府セキュリティ要件をクリアしたプラットフォームです。医療分野においては、藤田医科大学や順天堂大学との強力な共同研究プロジェクトにより大きな実績を上げています。

機能と特徴

電子カルテに記録された医師の記載内容をAIが理解し、厚生労働省が定める「標準請求コード」を自動的にマッピング・選択することで、極めて複雑な「診療報酬(レセプト)の算定」をバックグラウンドで自動で行うシステムを開発・実装しています。

導入事例

藤田医科大学病院:IBM社製の電子カルテと連携し、退院サマリーや看護サマリーの作成支援を開始。作成時間を驚異の「90%削減」することに成功し、全診療科の医師の9割以上がその精度を高く評価しています。

順天堂大学:従来、専門の医療事務スタッフや医師が総出で、病名と処置の整合性をチェックするために「数日」かけていた算定業務を、「AIによる原案作成に数十秒、人間のダブルチェックを合わせてわずか数分」へと縮小できる画期的な調査報告書をまとめました。これにより、会計の劇的なスピードアップが実現されつつあります。

『GaiXer(ガイザー) / GaiXer Medical Agent』WEBサイトより引用

AIの安全性とガイドラインについて

「AIが勝手に嘘の記述を作ったらどうするの?」「私たちのプライベートな会話や病歴データが、外部のAIに勝手に学習されたりしない?」

医療現場のAI利用において、このような懸念を抱くのは極めて自然なことです。

医療機関がAIを運用する際は、個人情報保護法や厚生労働省・経済産業省・総務省が定める「3省2ガイドライン」に準拠した、使用を徹底する必要があります。

例えば、入力されたデータはAIモデルの追加学習に一切利用されず、国内設置の安全なクラウドサーバー内で完全に保護・消去される仕組みであったり、患者様や家族への同意取得、そして何より、AIはあくまで医療従事者のアシスタントであり提示された内容の正確性をチェックし、署名(診断と処方等)を行う最終責任は100%人間が背負うということです。

AIに診断等を丸投げすることは絶対に許されず、医師法や薬剤師法に則り、最終的な判断、処方、そして説明は、すべて資格を持つ医療専門職が担当します。

 

まとめ

医療AIは急激な進化をしていますが、AIを用いることで医療の質を上げていくことが重要になります。私たちが提供する在宅ホスピスケア・緩和ケアの現場こそ「人と人がじっくり向き合う時間」が何よりも求められる場所だからです 。

ご自宅で最期を過ごされる患者様、不安に揺れるご家族、そして訪問看護師やケアマネジャー、薬剤師、ヘルパーという、地域に散在する多職種な医療チーム。この複雑なネットワークの中で、情報連携と患者様の「生活背景」「言葉にできないペインポイント」の共有を可能にするのは、これまでは膨大な量の書類の手書きと、深夜に及ぶカルテ転記業務でした。

これらの時間を、最先端AIが劇的に短縮してくれたなら、私たちはその創出された時間を、すべて患者様に寄り添う時間へと還元できます。

「最先端のデジタルを導入すればするほど、そこから生まれる医療の温もりは、かつてないほど深くなっていく」

これこそが、私たちが目指す、これからの先進的な地域医療の姿です。

画面とにらめっこする時間が消え、患者様に目線が合う、温かく誠実な診療時間をご用意して、ききょう会はこれからも皆様の健やかな療養生活を全力で支え続けます。

 

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医療法人ききょう会は東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)の提供を行っており、特に在宅ホスピスケア・緩和ケアに力を入れています。診療については以下の各クリニックへお問合せください。

 

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