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20代〜50代など若い人のための在宅ホスピスケアと制度の解説

[2025.12.08]

「ホスピス」や「緩和ケア」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 多くの方は、高齢の方が静かに最期を迎える場所、あるいは病院のベッドの上を想像されるかもしれません。

私たちききょう会が日々向き合っている現場には、少し違う景色も存在しています。それは、働き盛りで、子育ての真っ最中で、あるいは夢を追いかけている途中の、20代から50代の若い患者さんたちが、住み慣れた自宅で懸命に、そして穏やかに過ごされている姿です。

若くしてがんや難病と向き合うことになったとき、身体のつらさと同じくらい、あるいはそれ以上に押し寄せてくるのは社会的な役割に関する不安ではないでしょうか。

「仕事はどうなるのか」「住宅ローンは」「子どもの学費は」「まだ親の介護も残っているのに」

そして、医療を受けて行くにあたって直面する最大の壁が制度の狭間です。日本の介護保険制度は原則的に65歳以上の高齢者を対象としているため、現役世代が在宅ケアを受けようとすると、仕組みが複雑で分かりにくくなるのです。

このブログでは、在宅ホスピスケアを専門とする私たちききょう会が、若年層・就労世代の方が自宅で療養するために知っておくべきお金と制度の話を、年齢別に徹底解説します。

若い世代にこそ「在宅ホスピス」が必要な理由

制度の話に入る前に、少しだけききょう会の想いについて記させてください。

高齢者の緩和ケアが「老いを受け入れ、静かに着地する」ものだとすれば、若い世代の緩和ケアは「喪失に抗い、役割を全うする」ための戦友のような存在だと考えられます。若い患者さんの場合、病状の進行が速い一方で、最期のギリギリまで身体機能が保たれることが少なくありません。「昨日まで歩けていたのに」という急激な変化が起こり得ます。

だからこそ、病院の面会時間という制限された枠の中ではなく、自由な自宅で過ごす時間の密度が何より重要になってくると考えています。

小さなお子さんと、毎日一緒にお風呂に入りたい。
リモートワークで、体調が良い数時間だけ仕事を続けたい。
友人を呼んで、気兼ねなくお酒を飲んだり話したい。
配偶者と、同じベッドで手をつないで眠りたい。

これらは、病院では叶えにくい願いです。しかし、在宅医療と適切な痛み止め(緩和ケア)があれば、これらは夢ではなく日常になりえます。

ききょう会は、24時間365日対応在宅緩和ケア充実診療所です。ききょう会は、ただ痛みを取るだけではなく、患者さんが例えば「親として」「パートナーとして」「社会人として」あり続ける時間を、医療の力で支えます。

年齢別の利用可能な制度と費用の仕組み

ここからは、現実的で重要な制度のお話になります。日本の社会保障は年齢によって使える制度がガラリと変わりますので、年齢に合わせて確認してください。

40歳未満(AYA世代・若年層)の在宅ホスピスケア

介護保険が使えないという壁をどう乗り越えるか。

これがポイントです。先に、介護保険の利用は原則65歳以上と記しましたが、実は特例が認められると40歳以上でも介護保険が利用できます(後述)。しかし、40歳未満の方は公的な介護保険の対象とはなりえません。

介護保険では介護用ベッドを借りたり、訪問介護(ヘルパー)、訪問看護のサービスを1割や2割の金額で利用できますが、介護保険が使えないと、全額自己負担(10割負担)となり、月額数十万円かかることもあります。これが在宅療養を諦める最大の要因となっています。

しかし、諦めないでください。さらに救済措置がある場合があります。

若年がん患者在宅療養支援事業(自治体の独自助成)

例えば東京都の一部の市区など多くの自治体では、40歳未満の進行がん患者を対象に、介護サービス等の利用料の9割(つまり1割負担で済む!)を助成する制度があります。

以下は千代田区の例です。

千代田区より引用

https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/29112/shienjigyo-annai_3.pdf

東京都ではこちらに若年がん患者在宅療養支援事業を行っている市区が記載されています。

https://www.gan-portal.metro.tokyo.lg.jp/support/zyakunengan-zaitaku.html

利用可能なサービス
  • 福祉用具貸与(電動ベッド、車椅子、床ずれ防止マットなど)
  • 訪問介護(ホームヘルパーによる身体介護や家事援助)
  • 福祉用具購入(ポータブルトイレや入浴補助具など)

費用負担は基本的に1割負担で済みます(介護保険と同等)。上限額は月額6万円〜7万円程度の自治体が多いです。

注意点

一方で注意点もあります。
この制度は「申請した日」や「交付決定通知を受領した日」からの適用になることが多いです。なので例えば「先月分を遡って請求」はできません。ですので、病院からの退院が決まったらすぐに役所に連絡することが非常に重要です。

障害年金の活用

「初診日から1年6ヶ月経っていないともらえない」と思われがちですが、人工肛門の造設、在宅酸素療法などの場合は、期間が短縮されたり、認められたりするケースがあるようです。就労が難しくなった際の重要な収入源ですので、早めに年金事務所や専門家へ相談することをお勧めします。

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/2-8.pdf

 

 

日本年金機構より引用

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/2-8.pdf

40歳〜64歳の方の在宅ホスピスケア

特定疾病なら介護保険が使える

40歳〜64歳の年齢層(介護保険の第2号被保険者)は、本来なら介護保険は使えません。

しかし、老化に起因する病気とされる「16種類の特定疾病」に該当する場合は、65歳以上と同様に介護保険(1〜3割負担)が利用できます。

【16種類の特定疾病】

がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至
ったと判断したものに限る。)※
関節リウマチ※
筋萎縮性側索硬化症
後縦靱帯骨化症
骨折を伴う骨粗鬆症
初老期における認知症
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
【パーキンソン病関連疾患】
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症
多系統萎縮症※
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
脳血管疾患
閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患
両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

厚生労働省より引用

https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html

 

これらの疾患の場合は介護保険の対象となり、ケアマネジャーがつき、ケアプランを作成してもらえます。
ベッドのレンタル、訪問看護や訪問介護、住宅改修(手すり設置)などが保険適用になります。
ただ1点注意点があります。介護保険の申請から認定まで1ヶ月程度(自治体によってはもっと)かかることが課題です。がんの進行は速いため、認定を待っている間に状況が悪化することもあります。
そのため、「暫定プラン(認定が下りる前提でサービスを先に使い始める)」という運用を考えることも重要しょう。
地域の熟練したケアマネジャー(居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなど)と連携し、退院当日からスムーズに介護サービスが入れるよう、入院中から準備を進めるのが良いでしょう。

全年齢共通:医療費の上限(高額療養費制度)

訪問診療(医師の診察)や訪問看護(医療保険適用の場合)にかかる費用は、「高額療養費制度」によって守られています。

年収によって上限額は異なりますが、一般的な所得(年収約370万~770万円)の方であれば、月額の医療費上限は8万円強です。さらに、直近12ヶ月で3回以上上限に達すると、4回目からは多数回該当となり、上限額が44,400円まで下がります。

ポイントは事前に「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示をして下さい。そうすれば、窓口での支払いが最初から上限額までで済みます。高額な痛み止めの薬や、点滴の費用もすべてこの中に含まれることになります。

厚生労働省より引用

https://www.mhlw.go.jp/content/000333280.pdf

 

ききょう会における在宅ホスピスケア

制度が整っても、それを支える医療が盤石でなければ在宅生活は成り立ちません。特に若い患者さんの場合、ご家族も仕事をしていたり、幼いお子様がいたりと、介護力に限界があるケースが多いものです。

また、若い患者様は、ギリギリまで抗がん剤治療を続けていたり、輸血が必要な状態であったりと、高度な医療処置を必要とするケースが多くあります。
「家では痛みのコントロールができないのでは?」「輸血のために通院するのはもう限界」
そんな不安に応えるため、ききょう会では以下の処置に自宅で対応しています。

  • 在宅輸血療法: 輸血のために通院する必要はありません。ご自宅のベッドで実施可能です。
  • PCAポンプ(鎮痛薬持続皮下注): 医療用麻薬を持続的に投与し、痛みをコントロールします。入院中と変わらない緩和ケアが可能です。
  • 中心静脈栄養(IVH): 食事が摂れなくなっても、高カロリーの点滴を管理します。
  • 腹水穿刺: お腹に水が溜まって苦しい場合、自宅で水を抜く処置を行います。

「家に帰る=治療を諦める」ではありません。「場所を変えて、自分らしく生きるためのケアを受ける」とききょう会は考えています

 

さらに、ききょう会では「メディカルケアステーション(MCS)」という、医療介護専用のLINEのようなコミュニケーションツールを導入しています。
患者様・ご家族と、医師・看護師・ケアマネジャーがひとつのグループになり、チャット形式で情報を共有することで、他職種のコミュニケーションを円滑にしています。

「仕事中に父の様子が気になったら、チャットを見れば医師の往診報告が写真付きで届いている」
「書類の写真を送ればよいから手続きが素早く簡単になる」

このようなことが実現され、特にスマホ世代の若いご家族にとって、この「つながっている安心感」と「情報の透明性」は、在宅療養を続ける上での大きな支えとなっています。

 

在宅ホスピスケア・緩和ケアのご相談はこちらへ。

医療法人ききょう会は東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)の提供を行っており、特に在宅ホスピスケア・緩和ケアに力を入れています。

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