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アプリで治療するデジタルセラピューティクス(DTx)とは?

[2025.09.01]

アプリで治療するデジタルセラピューティクス(DTx)とは?

 

「病気の治療」と聞くと、多くの方は飲み薬や注射、手術などを思い浮かべるでしょう。

しかし今、医療の世界ではさらなる治療法としてデジタル技術を用いた治療が始まっています。それがデジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics: DTx)、日本語では「治療用アプリ」とも呼ばれるものです 。  

 

健康系アプリとは一線を画す「処方せん薬」

DTx(治療用アプリ)とはスマートフォンのアプリで行う治療です。

近いイメージとしては、歩数や食事を記録する健康管理アプリや、習慣形成アプリ、フィットネスアプリなどのヘルスケアアプリになるのですが、DTxはこれらの一般的なヘルスケアアプリとは全く異なる思想で作られています。

DTxは、病気の治療を目的として医師が患者様に「処方」することを前提として作られています 。よって、お薬と同じように、その効果と安全性は厳格な臨床試験(治験)によって科学的に証明され、国の規制当局(日本ではPMDA:医薬品医療機器総合機構)から医療機器としての承認を得ています 。そして、その多くが公的医療保険の対象となっています 。  

 

つまり、DTxは単なる健康サポートツールではなく、エビデンスに基づいたれっきとした治療なのです 。  

 

DTxの一例

現在世界でリリースされているDTxには次のようなものがあります。

例えば、「減酒治療補助アプリ」として沢井製薬社/CureAPP社よりHAUDY(ハウディ)の発売が9/1から始まることが発表されました。

https://www.sawai.co.jp/release/detail/000904.html

 

他にも様々な疾患に対応したアプリが様々な会社からリリースされています。

  • Akili Interactive社(ADHD)
  • Welldoc社(糖尿病)
  • Big Health社(不眠症、不安)
  • Kaia Health社(筋骨格系疼痛)
  • 大塚製薬とClick Therapeutics社との連携(うつ病
  • アステラス製薬とWelldoc社との連携(糖尿病)
  • CureApp社(高血圧)・・・日本企業
  • サスメド社(不眠症)・・・日本企業

疾病治療の新たな手段としてのデジタルセラピューティクス(DTx)の動向

科学技術予測・政策基盤調査研究センター 主任研究官 伊藤 裕子 より引用

 

 

DTxがもたらす医療の新しい可能性

DTxは、ソフトウェアならではの特性を活かし、従来の治療では難しかった課題を解決します。とくに、この特性は、各種依存症や行動習慣による疾患に有効となっています。

 

治療の空白期間を埋める

例えば、生活習慣病の治療においてよくあるケースでは1-2カ月に1度の通院になります。よって、診察日から次の診察までの間、患者さんは一人で治療と向き合うことになります。

通院日には医師の指導があり、その指導に従い食事の制限などに取り組むモチベーションはあるのですが、次の診察日となる1-2か月となると食事制限等のモチベーションが続かないことがあります。

DTxは、この「治療の空白」期間にスマートフォンを通じて患者様に寄り添い、個別化されたアドバイスやサポートを提供することで、治療効果を持続・向上させることができます 。  

 

CureApp SC WEBサイトより引用

 

行動変容を促す

生活習慣病や精神疾患など、多くの病気は日々の生活習慣や考え方の癖が深く関わっています。DTxは、認知行動療法などの医学的理論に基づいたプログラムによって、患者様が自ら生活習慣を改善し、病気と上手く付き合っていくための行動変容をサポートするコンテンツ(教育や記録など)を提供します 。

 

個別化された医療の実現

アプリは患者さんの日々のデータ(血圧、食事、気分など)を記録・解析し、一人ひとりの状態に合わせた最適なタイミングで、最適な情報を提供します 。これにより、画一的ではない、真にパーソナライズされた治療介入が可能になり、医師の治療効果が高まります。  

 

このように、DTxはデジタル技術の力で、患者様の治療をより身近で、継続的、かつ個別化されたものへと進化させているのです。

 

 

 

 

日本で既に始まっている「高血圧治療用アプリ」という選択肢

DTxが絵空事ではないことを示す最も分かりやすい例が、日本で既に承認・保険適用されている高血圧症治療用アプリです 。  

 

株式会社CureAppが開発した「CureApp HT」は、医師の処方によって使用できる、本態性高血圧症の患者さんのための治療用アプリです 。このアプリは、降圧薬による治療と並行して、あるいはその前段階として、高血圧の根本原因である生活習慣の修正をサポートします 。  

 

アプリはどのように高血圧治療をサポートするのか?

患者様は、日々の血圧や食事、運動、睡眠といった情報をアプリに入力します 。すると、アプリ内のアルゴリズムがそれらのデータを解析し、一人ひとりの患者様に合わせたアドバイスや知識を、対話形式で分かりやすく提供してくれます 。  

 

具体的には、以下のような生活習慣の領域にアプローチします 。  

減塩、減量、運動、睡眠、ストレス管理、節酒

 

単に「塩分を控えましょう」と言うだけでなく、なぜそれが大切なのか、どうすれば無理なく続けられるのかを、医学的根拠に基づいて丁寧にサポートし教えてくれます。

医師との診察と次の診察の間も、アプリが「かかりつけのコーチ」のように寄り添い、モチベーションを維持しながら生活習慣の改善を後押ししてくれるのです。

 

実際に行われた臨床試験では、このアプリを使用した患者様グループは、使用しなかったグループに比べて、血圧が統計的にも有意に低下したことが証明されています 。  

 

このように、デジタル技術は高血圧という身近な病気の治療においても、新しい価値を提供し始めています。さらに、このアプリがアプローチする生活習慣の一つである「睡眠」は睡眠時時無呼吸症候群と高血圧を結びつける重要な鍵とっています。

CureApp HT WEBサイトより引用

 

 

高血圧の原因は「睡眠時無呼吸症候群」かもしれません

「いろいろ試しているのに血圧が下がらない…」

このようなケースでは「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)」を疑うことがあります。  

睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり、浅くなったりする病気です 。近年、このSASが高血圧の非常に大きな原因となることが明らかになってきました 。  

 

なぜ睡眠中の「無呼吸」が血圧を上げるのか?

健康な人の血圧は、日中の活動時に高く、夜の睡眠中には心身を休めるために低くなるのが一般的です 。しかし、SASの患者さんの場合、夜間に逆の現象が起こります。  

 

無呼吸による酸欠状態

睡眠中に気道が塞がって呼吸が止まると、体内の酸素濃度が低下します 。  

 

脳の覚醒反応と交感神経の興奮

体はこれを生命の危機と判断し、少ない酸素を全身に届けようとします。その結果、体を興奮・緊張させる「交感神経」が活発になり、心拍数を増やし、血管を収縮させて血圧を急上昇させます 。  

 

呼吸再開と血圧の乱高下

しばらくして、苦しくなって呼吸が再開しますが、睡眠中にこの「無呼吸→血圧の急上昇」というサイクルが一晩に何十回、多い人では何百回も繰り返されます 。  

 

本来、体を休めるべき睡眠中に、心臓や血管はマラソンのような過酷な労働を強いられているのです。この負担が毎日続くことで、血管は傷つき、動脈硬化が進行します 。その結果、日中の血圧も高いまま固定化され、高血圧症を発症・悪化させるのです。  

 

特に、SASが原因の高血圧は、夜間から早朝にかけて血圧が下がらない「夜間高血圧」や「早朝高血圧」といった特徴を示します 。朝の血圧が高い方は特に注意が必要です。  

 

 

薬が効きにくい「治療抵抗性高血圧」の正体

驚くべきことに、一般的な高血圧患者の約30~40%にSASが合併していると報告されています 。さらに、生活習慣を改善し、3種類以上の降圧薬を服用しても血圧が下がらない「治療抵抗性高血圧」の患者様に至っては、その割合が70~80%にも上るというデータもあります 。  

 

これは、降圧薬が日中の血圧を下げても、夜間にSASによる血圧上昇の根本原因が解決されない限り、いたちごっこになってしまうためです 。もし高血圧の薬の効果を実感しにくいと感じているなら、それはSASが隠れている強いサインかもしれません。  

 

放置すれば心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気のリスクも高まります 。しかし、逆に言えば、SASを適切に治療することで、長年悩んできた高血圧が劇的に改善する可能性があるのです。  

 

 

 

不安に思ったらまず検査を。ご自宅で完結するオンラインSAS診療のご案内

「もしかして自分も…?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。まずは、以下の項目に当てはまるものがないか、セルフチェックをしてみてください。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)セルフチェックリスト

  • 家族やパートナーから、大きないびきや睡眠中に呼吸が止まっていることを指摘されたことがある
  • 朝起きても疲れが取れず、頭が重い、スッキリしない   
  • 日中、会議中や運転中などに強い眠気を感じることがある 
  • 夜中に何度もトイレに起きる
  • 高血圧の薬を飲んでも、なかなか血圧が下がらない

一つでも当てはまるものがあれば、一度専門の医療機関に相談することをお勧めします。

 

SASの検査は手軽で簡単

「検査となると、入院が必要で大変そう…」と心配されるかもしれませんが、ご安心ください。SASの検査は、まずご自宅でできる簡易検査から始めるのが一般的です 。  

当院のオンライン診療では、ご自宅に検査キットをお送りします 。使い方は簡単で、指や鼻、胸に小さなセンサーを取り付けて、いつも通りお眠りいただくだけです 。痛みもなく、簡単に睡眠中の呼吸の状態を詳しく知ることができます。  

また、この簡易検査の結果、より詳しい検査が必要と判断された場合も、ご自宅で精密検査が可能です。  

 

SASの治療とオンライン診療のメリット

検査の結果、SASと診断された場合、その重症度に応じて治療法を決定します。最も標準的で効果の高い治療法が「CPAP(シーパップ)療法」です 。これは、就寝時に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道が塞がるのを防ぐ治療法です 。  

 

多くの方が治療を始めたその日からいびきが解消し、ぐっすりと眠れるようになります。日中の眠気や倦怠感が改善するだけでなく、SASが原因だった高血圧も改善に向かいます 。  

 

当院では、このSASの検査から治療、そして治療開始後のフォローアップまで、オンライン診療で一貫してサポートしています 。  

お仕事で忙しい方、遠方にお住まいの方、様々なご事情で通院が難しい方でも、ご自身の生活スタイルを崩すことなく、本格的な検査と治療を受けていただくことができます。

こちらをご覧ください。

https://kikyoukai.net/sas-online

 

 

 

まとめ

長引く高血圧の裏には、自分では気づきにくい「睡眠時無呼吸症候群」という病気が隠れている可能性があります。そして今、医療はデジタル技術の活用により、時間や場所の制約を超えて、患者様一人ひとりに寄り添う新しい形へと進化しています。

 

当院は、こうしたデジタル技術を駆使した新しい医療を積極的に取り入れ、患者様の健康を多角的にサポートすることを目指しています。もし、あなたの高血圧が「薬だけではうまくいかない」と感じているなら、それは治療法を見直すサインかもしれません。

 

睡眠の問題を解決することが、あなたの血圧、そして未来の健康を守るための、最も効果的な一歩になるかもしれません。まずは、お気軽に当院のオンライン診療にご相談ください。一緒に、その悩みの原因を探し、あなたに最適な解決策を見つけていきましょう。

 

当院の睡眠時無呼吸症候群オンライン診療についてはこちらをご覧ください。

https://kikyoukai.net/sas-online

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