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2026年2月 最期まで自分らしく生き抜くために。在宅医療におけるACP(人生会議)

[2026.02.27]

厚生労働省WEBサイトより引用

https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/23.html

「もしものとき」を想像することから始まる医療

「もしものとき、あなたはどこで、誰と、どのような時間を過ごしたいですか?」

医療技術が目覚ましい進歩を遂げた現代において、私たちはかつてないほどの長寿を享受できるようになりました。超高齢社会となった日本では、これからは病院のベッドの上ではなく、住み慣れた在宅(ご自宅や介護施設)で最期を迎える人の割合がますます増えていくと思われます。

病気を治すための場所である「病院」から、自分らしい生活の延長線上で日々を紡ぐ「自宅」へのシフトが起きています。

しかし、いざ「在宅での療養」や「在宅ホスピスケア」を検討しようとしたとき、多くの方の頭に強い不安がよぎるはずです。

「夜中に急に痛みが強くなったら、誰が助けてくれるのだろうか?」

「自宅での介護は、家族の心と体を壊してしまうのではないか?」

「延命治療をするかしないか、どう決断すればいいのか分からない」

そうした不安を一つひとつ紐解き、患者様ご本人とご家族が心から納得できる選択をするためのプロセスが、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」です。

ACPは厚生労働省が2018年に「人生会議」と名付け、11月30日を「人生会議の日」としているほど重要と位置付けている言葉です。

また、「厚生労働省では人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」としてガイドラインも作成しています。

厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」より引用

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197721.pdf

ACP(人生会議)とは

ACPとは、将来、ご自身の心身の状態が変化し、自分の意思を伝えることが難しくなったときに備えて、あらかじめ「自分らしく生きるために大切にしたい価値観」「受けたい医療やケア(延命治療の希望や痛みの管理、最期を迎えたい場所など)」「自分の意思を代弁してくれる信頼できる人」について、ご家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有するプロセスのことです。

こうした重い決断を事前に話し合っていないと、いざという時、ご家族は医師から唐突に決断を迫られることになります。患者様本人の意思がわからないまま下した決断は、「自分のせいで苦しませてしまったのではないか」という深い自責の念として、ご家族の心に一生残り続けてしまうことがあります。つまりACPとは、本人の尊厳を守るだけでなく、遺されるご家族の心を救うための思いやりなのです。

ACPを始める4つのステップ

  1. ステップ1:自分自身の希望や思いについて考える
    まずは、ご自身の生活で大切にしたいことや、人生の目標、これまでの歩みを振り返り、どのような最期を迎えたいかを一人でじっくりと考えます。
  2. ステップ2:信頼できる人(代弁者)を選ぶ
    自分の価値観を最もよく理解し、いざという時に自分に代わって医療者と話し合ってくれる人を決めます。
  3. ステップ3:かかりつけ医などの医療・ケア従事者に相談する
    現在の病状や、今後予想される経過について専門家から正しい情報を得ます。
  4. ステップ4:希望や思いについて話し合い、伝える
    ご自身が考えたことをもとに、代弁者や医療者と具体的な医療・生活に関する希望を共有します。

厚生労働省では人生会議について分かりやすく説明している漫画も提供していますので、詳しく知りたい方は見てみても良いでしょう。

厚生労働省WEBサイトより引用

https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/23.html

「心変わりは当たり前である」という一番大切なルール

ACPを実践する上で、厚生労働省のガイドラインにも示されている最も重要な前提があります。それは、「心身の状態に応じて意思は変化しうる」ということです。話し合いは1回で終わるものではなく、患者さまの健康状態や考え方の変化に応じて、何度でも見直すことが大切です。

例えば、「最初はどんな治療をしてでも長く生きたいと思っていたけれど、副作用のつらさや、毎日介護に追われる家族の姿を見ていたら、痛みを和らげて自然な看取りを迎えたいと思うようになった」というお気持ちの変化は、医療の現場では日常茶飯事です。

厚生労働省の事例にもあるように、「妻と同じように自宅で最期を迎えたい」という本人の明確な意思があったとしても、介護を担う家族は不安から施設入所に揺れることがあります。そうした時に、本人と家族の板挟みになるケアマネジャー様の揺らぎも含めて、チーム全体で支え、対話を重ねることで「長男が『本人のためにならないなら延命しなくても良い』と本人の意思を推定し、自宅看取りの方針が決まる」といった合意形成に至るのです。

ACPは、一度書類にサインをしたら決まりという契約書ではありません。日々の感情の揺れ動きに寄り添い、迷い、立ち止まり、何度も軌道修正をしながら話し合いを重ねる「対話の連続」こそが、ACPの真の姿です。

ききょう会が大切にする「チューニング」の文化

私たち医療法人社団ききょう会は、展開するすべてのクリニック(花畑クリニック、伊奈クリニック、巣鴨ホームクリニック、東十条クリニック)が「強化型在宅療養支援診療所」および「緩和ケア充実診療所」としての認可を受けており、重症度の高い患者様のケアを専門としています。

私たちが組織の文化として最も大切にしているのが、「患者さんの方をきちんと向く」という姿勢と、それを実現するための「チューニング」という独自の考え方です。

多職種によるチューニング

在宅医療は、決して医師だけで完結するものではありません。訪問看護師、ケアマネジャー、薬剤師、訪問介護士(ヘルパー)など、さまざまな専門職がご自宅に伺い、チームとして患者様を支えます。しかし、関わる人が増えれば増えるほど、例えば「少しでも長生きさせるために栄養を重視する医療職」「無理をさせず穏やかに過ごしてもらいたい介護職」など意見が食い違うことが起こり得ます。

私たちは、全員がバラバラの方向を向くのではなく、主役である「患者さんの現在の希望(変化し続けるACPの内容)」に波長を合わせ、全員の認識を微調整していき、プロセスを「チューニング」と呼んでいます。職種の垣根を取り払い、ご家族の小さなつぶやきをすくい上げ、全員が「患者さんのQOL(生活の質)の向上」という同じゴールに向かって並走する。それが私たちの医療の基本姿勢です。

良い対話を生むための「環境」と「働きやすさ」

質の高い対話とホスピタリティを提供するためには、スタッフ自身に心のゆとりが必要です。当院では、クリニック(例えば花畑クリニック)の内装をホテルやカフェのようなデザインにし、緑を配したリラックスできる空間づくりを行っています。

また、24時間体制でありながらもシフト制やオンコール担当チームを分け、3歳未満のお子さんを育てるスタッフの残業除外や時短勤務制度など、ワークライフバランスを徹底して支援しています。

スタッフの心身のフレッシュさが保たれて初めて、患者様への優しく丁寧な「対話」が生まれると信じているからです。

「家に帰りたい」を可能にする、病院と同等の高度医療と24時間体制

ACPの対話の中で「最期は家で過ごしたい」という強い希望が出たとしても、それを支える医療技術と体制が伴わなければ、その願いは叶いません。「家では痛みが取れないのではないか」という不安に対し、ききょう会では、「24時間365日」の診療・相談体制を構築しています 。そして、通常は病院でしか受けられないような高度な医療処置を、ご自宅のベッドの上で提供しています。

例)

医療用麻薬の持続投与(PCAポンプ) 急激な痛みの変化に対し、持続的に鎮痛薬を投与し、患者様ご自身で痛みのコントロールができる機器を使用します。入院中と変わらない細やかな痛みの緩和がご自宅で可能です。
中心静脈栄養(IVH) 病状の進行により食事が喉を通らなくなった際にも、高カロリーの点滴を持続的に投与し、体力の維持を図ります。
在宅輸血・在宅酸素療法 血液の病気による重い貧血や、心不全・呼吸器疾患による息苦しさに対して、通院の体力を使わずにご自宅で輸血や酸素吸入を行うことができます。

これらの高度な在宅医療という基盤があるからこそ、私たちは患者様とご家族の目を真っ直ぐに見て、「大丈夫です、ご自宅でも私たちがしっかりと苦痛を取り除きます」とお約束できるのです。

当法人参考ブログはこちら(PCAポンプ勉強会)

https://kikyoukai.net/blog/pca-study

大研医器㈱WEBサイトより引用

地域との連携とDXの推進

在宅医療におけるACPの推進には、地域の医療機関、介護事業所との綿密な連携が不可欠です。ききょう会では、情報伝達の遅延や欠損を防ぐため、ICT(情報通信技術)やDXを積極的に活用しています。

MCS(メディカルケアステーション)による多職種コミュニケーション

日々刻々と変わる患者様の状態やご家族の不安をチーム全体で共有するため、当院では医療介護専用SNS「MCS(メディカルケアステーション)」を活用しています。医師、訪問看護師、ケアマネジャー、歯科医師などがセキュアな環境で繋がり、チャット形式でテキストや写真を共有します。

これにより、言葉の見える多職種連携が実現し、さらに外出先のご家族様にも往診報告を写真付きで確認していただくことができるため、患者様やご家族を交えた開かれたACPの実践が可能となっています。

CAREBOOKによるシームレスな入退院支援

状態の急変時や、在宅療養への移行時には、地域の高度急性期病院との迅速な連携が生死やQOLを大きく左右します。ききょう会では入退院支援クラウド「CAREBOOK(ケアブック)」を活用しています 。診療情報提供書などの書類データを安全かつ瞬時に送受信することで、従来主流であった電話やFAXによる連絡調整コストを劇的に圧縮し、シームレスでストレスのない入退院支援を実現しています。

当法人参考ブログはこちら(ICTによる病診連携/緩和ケア連携の推進)

https://kikyoukai.net/blog/byoushin-renkei

おわりに:あなたにとっての「最善の選択」を共に探すために

ACP(人生会議)は、決して「死ぬための準備」ではありません。残された限られた時間を、いかにあなたらしく、痛みや苦しみなく、大切な人たちと笑い合って「生き抜くか」という、前向きな「生のための準備」です。

「病院の先生には遠慮して言えなかったけれど、本当は家に帰って自分のベッドで眠りたい」

「もう苦しい治療はお休みして、家族と一緒に美味しいものを少しだけ食べたい」

このような人生最後の願いを現実化するためのものです。

ききょう会は、高度な医療技術、進化するテクノロジー、そして何よりも「あなたを想う心とチューニングの対話」をもって、24時間365日対応で命に寄り添っています。

ACPの答えはひとつではないでしょう。一度決めた答えを明日変えてしまっても構いません。ききょう会は患者様の変化する声に何度でも耳を澄まし、共に迷い、最善の選択を探し続けます。自分らしい最期をデザインするその尊い道のりを、私たちがサポートさせていただきます。

医療法人ききょう会は東京都から埼玉県まで広く在宅医療(訪問診療)の提供を行っており、特に在宅ホスピスケア緩和ケアに力を入れています。詳細は以下クリニックの方にお問合せ下さいませ。

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